抄録
胃の腫瘍に対するESDの新たな手技として「糸つき鉗子法」を開発した。これはcounter-traction method(トラクション法)の一種であり,糸つきの鉗子を内視鏡に装着して挿入後胃内で切り離し,病変を内視鏡と別方向から牽引・剥離する手法である。今回は通常のESDに対して,当院で開発したトラクション各法,すなわち,1)糸つきクリップ法,2)2チャンネル法,3)外づけ鉗子法,4)3チャンネル法,5)糸つき鉗子法との比較を,①切除径,②切除所要時間,③合併症の頻度を比較検討し,各手技の特徴点を明確にすることとした。切除径/平均切除時間は,従来法で25.9mm/57.7分,2ch法で28.0mm/52.8分,3ch法で24.5mm/37.2分,糸つきクリップ法で23.8mm/51.7分,外づけ鉗子法で21.3mm /31.9分,糸つき鉗子法で27.1mm/32.9分であり,糸つき鉗子法で有意な時間短縮を認めた。従来法で穿孔を3例に認めたが,いずれも保存的に治療しえた。トラクション各手技では穿孔を認めなかった。また本法の導入,クリティカル・パスの導入,内視鏡的縫縮術などの複合効果により,平均入院期間は3.5日程度に短縮することが可能であった。トラクション法,特に糸つき鉗子法は,穿孔率を軽減するのみならず,切除に要する時間を短縮しうる有用な手技と考えられた。