Progress of Digestive Endoscopy
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73 巻, 2 号
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掲載論文カラー写真集
臨床研究
  • 吉井 貴子, 本橋 修, 西村 賢, 中山 昇典, 高木 精一, 佐野 秀弥, 柳田 直毅, 亀田 陽一
    2008 年 73 巻 2 号 p. 30-35
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    【目的】内視鏡的粘膜切除(以下,EMR)は,化学・放射線療法後の食道癌遺残・再発病変に対する有用なsalvageの手段として期待されるが十分な報告は無い。salvage EMR 5例の経験を報告する。【対象】過去5年間に当院で化学・放射線療法にsalvage EMRを施行した食道癌5例。【結果】年齢中央値 : 71歳(64~78歳)。全例男性。病理組織 : scc/scc+smcc(4/1例)。病変占拠部位 : Ut/Mt/Lt(1/3/1例)。肉眼型(→EMR前) : type1 : 2例(→0-Ⅰ/0-Ⅱc各1例),0-Ⅱa+Ⅱc(→0-Ⅱc) : 1例,0-Ⅰ+Ⅱc(→0-Ⅱc) : 1例,表層拡大型0-Ⅱc(→0-Ⅱc) : 1例。一括 /分割切除(3/2例)。EMR深達度 : LPM /sm2 /mp(1/3/1例)。局所再発1例(APC追加),LN転移再発1例。EMR後MST : 290日(167~1230日)。局所無病生存期間中央値 : 290日(41~690日)。他病死1例。原病死なし。重篤合併症なし。【総括】salvage EMRの安全性,局所制御は良好だった。
  • 矢田 智之, 秋山 純一, 白井 聖一, 山田 晃弘, 赤澤 直樹, 櫻井 俊之, 大嶋 隆夫, 永田 尚義, 矢郷 祐三, 酒匂 赤人, ...
    2008 年 73 巻 2 号 p. 36-41
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     食道腺癌の高危険群であるバレット食道において,酸分泌抑制薬の治療によるバレット食道の退縮効果に関して,その頻度と関与する因子について検討する。酸分泌抑制薬による治療が6カ月以上行われ臨床経過を追跡できたバレット食道患者(SSBE14例,LSBE7例)を対象とした。扁平上皮島の拡大または円柱上皮化食道長の短縮を認めた場合,バレット食道退縮ありとし,退縮群と非退縮群での患者背景および酸分泌抑制薬による治療後の胸やけ症状・内視鏡的食道炎・pHモニタリングによる食道内酸逆流につき比較検討を行った。観察期間(中央値)1,504日,内視鏡回数(中央値)5.0回において,52.4%の患者にバレット食道退縮を認めた(退縮群11例,非退縮群10例)。退縮群は非退縮群に比し,男性・H. pylori陰性者に多かったが,年齢・食道裂孔ヘルニア・CYP2C19遺伝子多型・バレット粘膜長には差は認めなかった。また,退縮群では内視鏡的食道炎の治癒率は高かったものの(100%vs80%),治療後の胸やけ症状・食道内酸逆流に差は認めなかった。本邦においても4.1年間の酸分泌抑制薬による維持療法によって約半数にバレット食道の退縮が認められた。このようなバレット食道の退縮に寄与する因子,さらには再扁平上皮化による発癌抑制との関係について,今後更なる検討が必要である。
  • 西 隆之, 山本 壮一郎, 幕内 博康, 島田 英雄, 千野 修, 木勢 佳史, 釼持 孝弘, 田島 隆行, 原 正, 三朝 博仁, 武智 ...
    2008 年 73 巻 2 号 p. 42-45
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     本邦では稀とされてきた Barrett食道癌報告例が,近年急速に増加している.そのBarrett食道癌を早期に内視鏡で発見するには,好発部位を知っておくことが重要である。当科で扱ったBarrett食道癌と,本邦報告例を臨床的に検討し,Barrett食道癌の好発部位につき検討した。
     当科で扱ったBarrett食道癌33例と,本邦におけるBarrett食道癌報告590例を対象とし,癌の発生部位に関して,1.Barrett食道内の位置(口側・中央・肛門側) 2.局在(前壁・後壁・左壁・右壁)を検討した。Barrett食道内における癌は,口側・中央・肛門側ではほぼ同等に発生していた。その理由として,口側粘膜は細胞増殖活性の指標となるKi-67 LIが肛門側に比べ高値である一方で,肛門側は,口側に比べ,発生からの時間的経過が長く,炎症による粘膜の脱落再生が惹起される可能性が高いので発癌しやすい,と推察した,これらの理由より,Barrett食道の口側・肛門側のどちらにも発癌のみられる原因のひとつではないかと推察した。
     腫瘍の局在では,前後壁では差がなかったが右側壁は左側壁の2倍以上の頻度で発生していた。この理由は明らかにできず,今後の検討課題としたい。
  • 川上 浩平, 河合 隆, 福澤 誠克, 高 麻理, 片岡 幹統, 糸井 隆夫, 酒井 義浩, 森安 史典, 八木 健二, 山岸 哲也, 高木 ...
    2008 年 73 巻 2 号 p. 46-49
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     当院で治療された早期胃癌85例を対象とし,ガイドライン病変と適応拡大病変に分け,治療成績を比較検討した。ガイドライン病変62例,適応拡大病変23例で平均腫瘍径は10.7mm : 29.0mm,偶発症は出血4.8%(3/62) : 8.6%(2/23),穿孔は適応拡大病変1例のみであった。平均手術時間は80.8分 : 149分,一括切除率は91.9%(57/62) : 82.6%(19/23)であった。予後に関しては,ガイドライン病変,適応拡大病変ともに,治癒切除された病変では,再発,転移は認めていない。ガイドライン病変の非治癒切除5例の予後は,手術1例,再ESD1例,経過観察2例,詳細不明が1例であった。適応拡大病変の非治癒切除4例の予後は,2例が手術,2例が経過観察されている。側方範囲診断の見誤りによる非治癒切除例を適応病変,適応拡大病変ともに1例ずつ認め,確実な範囲診断を行うことが重要と思われた。
  • 亀山 哲章, 冨田 眞人, 三橋 宏章, 松本 伸明, 矢作 芙美子
    2008 年 73 巻 2 号 p. 50-53
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     当院における腹腔鏡下胃切除術を施行した20例(LADG16例,LATG4例)について検討した。リンパ節転移は4例に認め,深達度はMP2例,SM2例であった。病理組織学的所見では,低分化腺癌(混在型を含む)15例であった。術前診断よりも術後診断にて深達度が深かった症例は3例あり,3例ともに低分化腺癌であった。また,病巣の広がりが術前診断よりも術後2倍以上になった症例(長径×短径)は6例あり,長径が2倍以上であった症例はそのうち2例であった。この2例はともに低分化腺癌であり,最も変化の大きかった症例は術前20×15mmと思われた病巣が摘出標本では60×50mmであった。
     低分化腺癌(混在型を含む)では,病巣の範囲,深達度ともに術前診断が困難な場合があり,術前内視鏡では必要に応じて拡大観察やNBI観察を行うべきである。ESDをTotal biopsyと位置付け施行するという考えもあるが,低分化腺癌はM癌であってもリンパ節転移の可能性があり,当院では,現段階においては腹腔鏡手術を第一選択としている。
  • 岩本 淳一, 下河辺 宏一, 伊藤 真典, 溝上 裕士
    2008 年 73 巻 2 号 p. 54-57
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     今回我々は未分化型癌混在病変の臨床像を明らかにするため,当院でESD施行した早期胃癌101例を対象とし,術後診断で未分化型癌混在病変の検討を行った.術後診断で純分化型癌,未分化型癌混在病変の臨床像について比較検討では,深達度に関しては粘膜内(M)がそれぞれ90例(94.7%),2例(33%),粘膜下層浸潤(SM)がそれぞれ5例(5.3%),4例(66%)と有意に純分化型ではM癌が多く,未分化型癌混在病変ではSM癌が多かった(p<0.05).また腫瘍長径が21mm以上の大きさの病変が純分化型では23例(24.2%)に対し,未分化型癌混在病変では5例(83%)と有意に未分化型癌混在病変で病変が大きい傾向を示した(p<0.05)術前診断tub2症例の検討では,深達度に関しては粘膜内(M)がそれぞれ90例(94.7%),2例(33%),粘膜下層浸潤(SM)がそれぞれ5例(5.3%),4例(66%)と有意に純分化型ではM癌が多く,未分化型癌混在病変ではSM癌が多かった(p<0.05).また腫瘍長径が21mm以上の大きさの病変が純分化型では4例(33%)に対し,未分化型癌混在病変では5例(83%)と有意に未分化型癌混在病変で病変が大きい傾向を示した(p<0.05).これまでの報告も含め,未分化型癌混在病変は悪性度が高く今後ESDに関する未分化型癌混在病変の取り扱いに関しての更なる検討を要する.
  • 細江 直樹, 今枝 博之, 井田 陽介, 菅沼 和弘, 津和野 伸一, 岩崎 栄典, 斎藤 義正, 鈴木 秀和, 岩男 泰, 相浦 浩一, ...
    2008 年 73 巻 2 号 p. 58-61
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    【背景】内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は安全に施行できるようになってきたが,困難例もみられる。今回,当院における胃ESDの手技の工夫および4日間のクリニカルパス(以下,パス)について検討した。【方法】2005年2月より2008年5月まで当科にて胃腫瘍性病変に対するESDを170例182病変に施行,そのうち入院から退院まで4日間のパスを167例179病変(パス適応回数174回)に行った。パス適応179病変のうち134病変でロック付き把持鉗子を用い病変にcounter tractionをかけてESDを行った。ロック付き把持鉗子の有効性,パスの安全性,有効性について検討した。【結果】ロック付き把持鉗子により粘膜下層を直視しながら安全に剥離することができた。平均入院日数4.1日,4日間で退院するというアウトカムの達成率は96.6%であった。穿孔はなく,出血に起因するバリアンスを6例認めた。バリアンス症例はすべて再度内視鏡検査(third look)を行い,止血を確認し退院した。4日間で退院した後,出血し,再入院した症例が3例認められた。いずれも止血術を施行したが輸血を必要としなかった。【結論】術中の工夫としてロック付き把持鉗子を用いたCounter tractionは有用であった。また,4日間のクリニカルパスは安全に施行でき,医療の効率化,均質化,偶発症に対するリスクマネージメントの効果があると考えられた。
  • 梅谷 薫, 佐藤 晋一郎, 桑原 智子
    2008 年 73 巻 2 号 p. 62-65
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     胃の腫瘍に対するESDの新たな手技として「糸つき鉗子法」を開発した。これはcounter-traction method(トラクション法)の一種であり,糸つきの鉗子を内視鏡に装着して挿入後胃内で切り離し,病変を内視鏡と別方向から牽引・剥離する手法である。今回は通常のESDに対して,当院で開発したトラクション各法,すなわち,1)糸つきクリップ法,2)2チャンネル法,3)外づけ鉗子法,4)3チャンネル法,5)糸つき鉗子法との比較を,①切除径,②切除所要時間,③合併症の頻度を比較検討し,各手技の特徴点を明確にすることとした。切除径/平均切除時間は,従来法で25.9mm/57.7分,2ch法で28.0mm/52.8分,3ch法で24.5mm/37.2分,糸つきクリップ法で23.8mm/51.7分,外づけ鉗子法で21.3mm /31.9分,糸つき鉗子法で27.1mm/32.9分であり,糸つき鉗子法で有意な時間短縮を認めた。従来法で穿孔を3例に認めたが,いずれも保存的に治療しえた。トラクション各手技では穿孔を認めなかった。また本法の導入,クリティカル・パスの導入,内視鏡的縫縮術などの複合効果により,平均入院期間は3.5日程度に短縮することが可能であった。トラクション法,特に糸つき鉗子法は,穿孔率を軽減するのみならず,切除に要する時間を短縮しうる有用な手技と考えられた。
  • 松久 威史, 山田 宣孝, 岡本 富美子, 岡本 明彦
    2008 年 73 巻 2 号 p. 66-70
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     Helicobacter pyloriH. pylori)感染診断法の1つである組織鏡検法は,非透析患者において頻用されている。しかし,透析患者は血栓予防のため低用量アスピリン,抗血小板薬を内服しており非侵襲的な診断法が望ましい。そこで,透析患者のH. pylori感染診断に13C-尿素呼気試験(Urea breath test : UBT)が有用かどうかを検討した。対象とした透析患者は27例,平均年齢66.8歳,平均透析期間3年1カ月である。非透析成人におけるユービットを用いた13C-UBTのcut-off値は2.5‰(20分値)である。H. pylori陽性透析例(10例)のΔ13CO2 20分値は透析日58.9‰,翌日40.6‰,翌々日58.3‰,H. pylori陰性例(17例)のそれは4.0‰,6.2‰,8.5‰であった。透析日の感度は90.0%,特異度は58.8%,一致率は70.4%,翌日の感度は100.0%,特異度は70.6%,一致率は81.5%,翌々日の感度は100.0%,特異度は70.6%,一致率は81.5%を示し,特異度,一致率が低かった。これは,H. pylori陰性例において,ウレアーゼ活性を有する胃内常在菌により,13C-UBT開始直後のΔ13CO2濃度が急上昇するためと考えられた。更に,H. pylori陽性例のΔ13CO2濃度低値例の存在も影響していると思われた。そこで,H. pylori陽性例,陰性例のΔ13CO2濃度オーバーラップが比較的少ない値より,透析患者に有用な13C-UBT cut-off値を算出した。その結果,透析日の13C-UBT開始10分後のΔ13CO2濃度に基づくreceiver operating characteristic(ROC)曲線より,cut-off値は5.0‰となった。非透析成人のcut-off値(2.5‰)を用いるよりも感度,特異度,一致率は良好であったが(それぞれ90.0%,88.2%,88.9%),組織鏡検法に比し劣っていた。
  • 下河辺 宏一, 岩本 淳一, 溝上 裕士
    2008 年 73 巻 2 号 p. 71-73
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    【はじめに】平成19年10月の保険適応からカプセル内視鏡(CE)を導入し,ダブルバルーン小腸内視鏡(DBE)と併用して小腸の精査を行ってきた。【目的】当院でのカプセル内視鏡の現状について検討する。【対象・方法】2007年10月から2008年5月までに当院でCEを施行した31症例を対象とし臨床像について検討した。さらに検査目的や診断について当院でのDBE症例(85例,104回)との比較検討を行った。【結果】平均年齢65歳,男性17例,女性14例であった。滞留症例なし。検査目的は原因不明の消化管出血(obscure gastorintestinal bleeding ; OGIB)28例(90.3%),既知の疾患の小腸病変検索3例(Osler weber病1例,大腸ポリポーシス1例,好酸球性胃腸炎1例)(9.7%)であった。OGIB症例における診断結果は,angiodysplasia (出血なし)7例(25.0%),angiodysplasia (出血あり)1例(3.6%),NSAID起因性潰瘍2例(7.1%),クローン病1例(3.6%),異常所見なし10例(35.7%),大腸憩室出血疑い6例(21.4%),胃angiodysplasia1例(3.6%)であった。【結語】CEではDBEと比較してangiodysplasiaの診断が多かった。CEでは小腸外病変が25%と多く,CE前の上部・下部消化管の精査につき再検討する必要性があると考えられた。
  • 乾 正幸, 水野 研一, 大塚 和朗, 児玉 健太, 工藤 由比, 樫田 博史, 工藤 進英
    2008 年 73 巻 2 号 p. 74-76
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     潰瘍性大腸炎(UC)患者の増加とともに重要となってきたUC関連腫瘍のサーベイランス内視鏡の有効性について検討した。まず,全大腸炎型,左側大腸炎型潰瘍性大腸炎患者85例を対象とし,通常内視鏡観察に続き色素内視鏡および拡大内視鏡観察を行い,同部からの生検標本と比較検討した。次にUC関連腫瘍13症例を検討した。pit pattern診断は工藤分類によった。Ⅰ型,Ⅱ型pit patternの部位からの生検510個からは,UC関連腫瘍は検出されなかった。UC関連腫瘍では,VN型ないしVI型,Ⅳ型,ⅢL型類似のpit patternがみられ,特にⅣ型のpit patternを呈する病変が多かった。これらでは,pitの癒合や腺口開大,大小不同,腺管密度が疎となる等の不整な変化が領域性をもって認められた。pit pattern観察によってⅢL,Ⅳ,Ⅴ型などの腫瘍性pit patternを呈する箇所より生検すればより効率よくUC関連腫瘍が検出できる可能性がある。
  • 岸原 輝仁, 石山 晃世志, 文園 豊, 今田 真一, 小川 大志, 千野 晶子, 浦上 尚之, 五十嵐 正広
    2008 年 73 巻 2 号 p. 77-79
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     アメーバ性大腸炎の臨床病理学的特徴を明らかとし,潰瘍性大腸炎(以下,UC),Crohn病(以下,CD)との内視鏡的鑑別診断を中心に検討した。当院で経験した19例での感染経路の分析では,異性間感染が11/19(56%),同性愛者間感染3/19(16%),海外での感染6/19(32%)などであった。病変の分布は盲腸19/19(100%),直腸12/19(61%)に多く,その主な内視鏡所見はアフタ様びらん95%(18/19),びらん周囲の紅暈95%(18/19),タコイボ様びらん74%(14/19),打ち抜き状潰瘍47%(9/19),汚い白苔の付着90%(17/19),易出血性粘膜42%(8/19)などであった。UCではびらん間にも連続性の炎症があり,タコイボ状のびらんや汚い白苔は乏しい。CDではびらんの分布に縦走傾向を呈することが多く,白苔は伴うも汚さはない。また,小腸病変を伴う頻度が高い。アメーバ性大腸炎の確定診断率は,粘液の直接鏡検で88%,生検組織診断で85%,血清抗体価で67%であった。3者を組み合わせることで診断率の向上が期待される。IBDの鑑別診断としてアメーバ性大腸炎を常に念頭に置くことが重要であると思われた。
  • 大島 敏裕, 平良 悟, 野中 雅也, 八木 健二, 湯川 郁子, 高 麻理, 近藤 麻里, 川上 浩平, 河合 隆, 宮岡 正明, 酒井 ...
    2008 年 73 巻 2 号 p. 80-83
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome ; 以下,AIDS)は,HIV(human immunodeficiency virus)感染症で引き起こされる細胞性免疫不全の総称であり,日和見感染症や悪性腫瘍などの合併症を来たす。なかでもcytomegalovirus(以下,CMV)は不顕性感染の経過を経て,宿主が免疫不全状態に陥ると多臓器障害に及ぶ場合も少なくない。消化管病変もそのひとつとされるが,AIDSに合併したCMV腸炎における臨床的特徴についての報告は稀である。今回我々は病理組織学的にCMV腸炎と確定診断したAIDS患者7例を対象とし,下部消化管病変における臨床病理学的特徴について検討した。検討項目は1.臨床背景,2.内視鏡像と病変部位,3.生検陽性率と病理組織像の3項目とした。【結果】主訴は水様性下痢が85.7%と最も多かった。また,CD4陽性Tリンパ球数は平均31.4(4~74)/μと全例低値であった。内視鏡像では打ち抜き潰瘍を全例に認め,なかでもBauhin弁上に高率であった(85.7%)。生検組織中に存在した核内封入体は潰瘍底の肉芽組織あるいは潰瘍に隣接した粘膜内の血管内皮細胞や周囲の間質に存在していた。【結語】CD4数の低下を来たしたHIV感染症患者に水様性下痢などの消化器症状が出現した際には積極的に内視鏡を行い,打ち抜き潰瘍がみられた際には潰瘍底もしくは潰瘍辺縁からの生検がCMV腸炎の診断に繋がるものと考えられた。
  • 小池 貴志, 為我井 芳郎, 工藤 恵子, 有賀 元, 大和 滋, 斉藤 幸夫
    2008 年 73 巻 2 号 p. 84-87
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     早期大腸癌の内視鏡治療と外科手術の適応区分について検討を行った。対象 ; (1)大腸pSM癌217例(男129例,女88例,平均65.9歳)221病変を対象としてリンパ節転移危険因子について分析し,内視鏡治療にて根治可能な病変について検討を行った。(2)ESDを施行した大腸腫瘍185病変によるESDの適応区分と粘膜下に線維化を有する病変29病変の治療方針の検討を行った。結果 ; (1)脈管侵襲,リンパ管侵襲,budding2~3がリンパ節転移危険因子でありこれらの因子と宿主の全身状態を加味し外科的手術が検討される。Pit pattern診断の質的診断,深達度診断の精度は高くESD適応病変は20mm以上でⅢS,ⅢL,ⅤI型pit patternを示し推定深達度sm slightまでの病変と考えられた。(2)大腸ESD施行症例遺残再発は無く,偶発症は微小穿孔1例(0.5%)のみで,安全性,根治性は確立されてきた。一方,粘膜下層に線維化を伴った病変のESD一括切除率75.9%,1例で穿孔を認め,病変の大きさより粘膜下層の線維化がESDの成否の問題となる。粘膜下層の良性の線維化で内視鏡像で索状,帯状の線維化,軽~中等度の癌浸潤例は粘膜下剥離線が想定可能でESDの標準的適応である。一方,良性の線維化でスクリーン状呈する病変,不整な血管と褐色調を呈する高度癌浸潤例はESDの標準的適応外であると考えられた。
  • 壁島 康郎, 大森 泰, 高木 英恵, 玉井 博修, 伊藤 大輔
    2008 年 73 巻 2 号 p. 88-91
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     2005年1月から2007年7月に当院で治療した早期大腸癌328病変(pM : 294,pSM1 : 34)を対象とし,治療成績を検討した。内視鏡治療は315例(EA 260例,EB 49例,EC 2例),経肛門手術は5例であった。腹腔鏡下手術(12例)施行理由は,腫瘍肉眼型ではLST-NGが最も多く,①大型腫瘍(large type),②屈曲部腫瘍(flexura type),③半月ひだを跨ぐ腫瘍(fold astrided type)の3分類では③が8例(2.4%)で最多であった。内視鏡的一括切除不可の理由は,径30mm以下のfold astrided typeが最多であった(11.8%)。径30mm以下,fold astrided type,LST-NGに対するESD導入は,早期大腸癌における外科治療の回避において有用であると考えられた。一方,large type,flexura typeのLAC移行率はいずれも0.3%と頻度は低かったが,技術・安全面から,現時点での治療選択肢は,一般病院においてはLACが妥当であると考えられた。
  • 福澤 誠克, 平良 悟, 片岡 幹統, 竹下 理恵, 真鍋 智津子, 立花 浩幸, 柳澤 文彦, 野中 雅也, 羽山 弥毅, 山本 圭, 青 ...
    2008 年 73 巻 2 号 p. 92-96
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     20mm以上の大腸腫瘍性病変に対して内視鏡治療を行い,3カ月以上経過観察しえたEMR/EPMR : 215病変,ESD : 23病変を対象とし,それぞれの治療成績を比較検討した.遺残・再発率はEPMR群と比較するとESD群で有意に低く(p<0.01),一括切除が可能だった症例では遺残・再発は認めなかった。EMR/EPMR群では27例に遺残・再発病変を認めたが,1例で浸潤癌での再発を認め,外科切除を要した。治療時間はESD群で約4倍の時間を要した(p<0.01)。20mm以上の腫瘍性病変に対してESDはEMR/EPMRと比較し,術時間が長かったが,偶発症も認めず,全大腸において比較的安全な治療手技と考えられた。しかし技術的に一括切除・計画的分割切除が困難な場合は外科切除を選択することが,遺残・再発率を減少させ,患者のQOLの向上につながることを常に念頭に置くべきである。
  • 水出 雅文, 田中 良樹, 小畑 力, 山田 俊哉, 土田 浩之, 柿崎 暁, 伊島 正志, 丸山 秀樹, 増田 淳, 草野 元康
    2008 年 73 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     近年,胆膵疾患のガイドラインが作成され,緊急ERCPを要する病態の記述もなされている。しかし,胆膵専門医が不足している地域では診療時間外における胆膵疾患の診察を専門医以外が対応するケースも多く,同一疾患でも当直医の判断によって治療方針が異なる可能性がある。今回,診療時間外緊急ERCPの現状をretrospectiveに検討した結果,中等症急性胆管炎症例において当直医の判断による治療方針がわかれていた(当直医が保存的治療を選択するか,または胆膵専門医にコンサルトのうえ緊急ERCPを施行するか)。また,急性胆管炎中等症判定項目は5項目存在するが,重症化を予測する項目が特定できれば中等症症例における緊急ERCPの適応も明確になると思われる。急性胆管炎中等症判定5項目を重症急性胆管炎群と待機的ERCPが可能であった中等症急性胆管炎群間で比較検討した結果では,血小板数減少項目のみ重症急性胆管炎群で有意差を持って多く認められた。保存的加療中に重症化した2症例においても,経時的推移にて明らかな血小板減少を認めており,中等症判定項目のうち血小板数減少は重症化,MOFへの進展を予測する項目になる可能性が考えられた。中等症急性胆管炎の中でも,血小板減少を認める症例は緊急ERCPを施行すべきと思われた。今後,中等症急性胆管炎症例のさらなる検討が行われ,重症化予測に関与する因子などの解明が期待される。
  • 小泉 優子, 今村 綱男, 小山 里香子, 奥田 近夫, 竹内 和男
    2008 年 73 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     胆膵領域では緊急処置を必要とする致死的な病態が日常的に存在する。処置の主となる内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)は熟練した術者,介助者,X線透視操作者,器具出しなど外回りといったマンパワーを必要とし,緊急で施行することに難渋することが少なくない。当院における緊急ERCPの実態について調査した。2006年1月から2年間における自験例594症例のうち,約1/4を占める146例に対し,緊急的にERCPを行っており,特に急性胆管炎が125例と大多数を占めた。これらをretrospectiveに急性胆道炎の診療ガイドラインと照らし合わせると,重症急性胆管炎の場合,疾患・時間帯を問わず全症例で速やかにERCPを施行していた。中等症および軽症急性胆管炎の場合,原疾患が総胆管結石や悪性腫瘍における胆管ステント閉塞の場合は,速やかに施行していた。一方,悪性腫瘍初発例の場合は,胆管炎が保存的治療が可能であればCTやEUS等の画像検索を先行し待期的に行う例が多かった。重症度分類を用いての緊急ERCPのトリアージに関しては,重症のうち「菌血症」の有無は発症時には確定できないことと,中等症のうち「黄疸」の項目は原疾患が悪性腫瘍の場合には高頻度に該当してしまう点が,臨床的矛盾点として考えられた。ERCPにより急性胆管炎は全例改善しており,有用な治療手段であった。実施時期に関しては来院時間帯や検査室の状況が大きく関与していた。
  • 和泉 元喜, 阿部 剛, 山田 英司, 澤邉 文, 谷田 恵美子, 細野 邦広, 光永 眞人, 白濱 圭吾, 金崎 章
    2008 年 73 巻 2 号 p. 107-110
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     致死的状態に至る可能性がある急性胆道炎や急性膵炎に対して診療ガイドラインが作成されている。軽症例が重篤化しない指標はなく,我々は内視鏡治療により改善が期待できる場合は可及的早期に施行している。夜間・休日にも内視鏡室と放射線部に所属する看護師が救急室に勤務するため,緊急内視鏡や経皮経肝的ドレナージ術が施行できる。USやCTは施行できるが,緊急のMRCPは困難であるため施行しない場合がある。2003年1月より2007年12月までの5年間で,急性胆管炎246件(総胆管結石197件,悪性胆道狭窄46件,慢性膵炎3件),胆石性膵炎10件に対して24時間以内にERCPを施行した。総胆管結石によると考えられる207件では,147件で一期的な治療が施行できた。19例では全身状態不良やDIC合併,抗血栓塞栓療法中のため,ドレナージ術のみにとどめた。総胆管結石の検出率はUSで19%,CTで39%,US+CTで41%であった。胆管の拡張所見を合わせると,USで56%,CTで62%,US+CTで70%が胆管の異常を指摘され,急性胆管炎の参考所見となっていた。USやCTで胆管の異常が指摘できずにERCPで結石を認めたものは,診療ガイドラインの確診35件と疑診11件であった。入院期間を延長させる合併症は認めず,積極的なERCPは有用であった。
  • 中原 一有, 片倉 芳樹, 伊澤 直樹, 足立 清太郎, 根岸 龍二郎, 平川 麻美, 小林 美奈子, 小原 宏一, 山田 典栄, 岡本 賢 ...
    2008 年 73 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     2005年に発刊された「科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン」では,重症度に応じたタイミングで胆道ドレナージを行う診療指針が示され,重症,中等症の胆管炎に対しては緊急もしくは速やかに胆管ドレナージを行うことが推奨されている。今回我々の緊急ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)130件の検討では,ガイドラインではまず保存的初期治療を行うとされる急性胆管炎軽症例が8件(6.2%),診断基準を満たしていないものが11件(8.5%)含まれていた。また,指導医の緊急ERCP参加率は69%で,非緊急例(88%)と比較し有意に低かった (P<0.001)。ガイドラインの基準を満たさない例での緊急施行理由は,多くが休日前などで,初期治療に反応しなかった場合に時間外のスタッフ不足の状況でERCPを施行することを危惧したものであり,臨床の場ではその時の診療体制に応じて緊急ERCPの適応が判断されている現状があった。自験緊急ERCP例では非緊急例と比べ同等の手技成績と安全性をもって行えていたが,処置内容は緊急処置に携わるスタッフの経験値に左右される場合があり,ドレナージのみにとどまっているものが多かった。実際の臨床の場での緊急ERCPは必ずしもガイドラインに即していない場合もあり,各施設の状況を総合的に考慮して適応,処置内容を判断する必要があると思われた。
  • 山岸 由幸, 朴沢 重成, 相馬 宏光, 菊池 真大, 中野 雅, 今枝 博之, 相浦 浩一, 緒方 晴彦, 日比 紀文
    2008 年 73 巻 2 号 p. 116-119
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    【目的】急性胆管炎初期治療における内視鏡的胆管ドレナージは診療ガイドラインにて推奨度Aであるが,その方法は各施設の方針に委ねられている。今回,緊急ERCPを施行した急性胆管炎例を検討し標準的ドレナージ法に適した方法につき考察した。【対象】2005年1月より2008年5月の間に緊急ERCPを施行した急性胆管炎56例を対象に,背景疾患,ドレナージ方法と合併症,転帰などにつき検討した。【成績】平均年齢70.7歳で,男女比27 : 29。疾患内訳は総胆管結石初回治療例が34例,悪性疾患初回例が4例,総胆管結石治療後例が3例,ステント留置後の症例が13例,その他(慢性膵炎,PSC)2例であった。重症度は重症9例,中等症43例,軽症4例であった。71.4%に脳・心血管系はじめ併存疾患があり,32.1%が抗凝固・抗血小板治療薬投与中であった。75%が検査時間枠外の処置で,ドレナージ法は96.4%でENBDを選択した(うち87%は乳頭処置をせず)。術後合併症としてENBD自己抜去は2例であった。血液培養陽性30%対し胆汁培養は96.1%で陽性で,84.3%で複数菌が検出された。92.6%でENBDより造影を施行し病巣評価に利用した。【結語】急性胆管炎に対する緊急ERCP,ENBD留置は比較的安全かつ起因菌同定,病巣評価の面からも有用性が高く,緊急時の対応として標準的なものになり得ると思われた。
  • 植村 昌代, 藤田 善幸, 鈴木 祥子, 藤谷 志野, 石井 直樹, 飯塚 雄介, 福田 勝之, 堀木 紀行
    2008 年 73 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
     急性胆管炎や胆石膵炎に関する緊急ERCPはガイドラインでも有効性が認められ,当院では医師・看護師・内視鏡技師のon call体制で行っている。[対象と方法]2006年4月1日から1年間で施行した緊急ERCP68症例の現状,効果と安全性を後向きチャートレビュー形式で検討した。[結果]緊急ERCPは全ERCPの38%で,65歳以上の高齢者が59%を占めた。有基礎疾患症例は70%で,16.7%で抗血小板薬や抗凝固薬を内服していた。原因疾患ではoncogenic emergencyが増加していた。診断基準ではガイドライン外症例が14例(20.5%)含まれたが,うち4例で緊急ERCP時に感染胆汁を認め,3例が85歳以上であった。重症度分類では16例(24.2%)がガイドラインでは待期的ERCPの適応とされる軽症例であったが,うち6例で感染胆汁を認めた。結石症例では85.7%で一期的切石を行い,抗血小板薬内服例や全身状態が悪い例ではドレナージを優先した。胆道狭窄・閉塞ではドレナージ法は感染の程度やその後の治療方針により選択していた。緊急ERCP後98%で症状や検査所見の改善を認め,合併症は軽症膵炎1例(1.4%)であった。[結語]緊急ERCPは体制を整えて行えば安全に施行可能であった。ガイドラインで緊急ERCPの適応外とされる病変にも重症化する可能性のある急性胆管炎が含まれ,特に高齢者や画像診断陰性例でその傾向がみられた。
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