2009 年 74 巻 2 号 p. 112-113
症例は56歳女性。検診で十二指腸に異常を指摘され紹介。上部消化管内視鏡検査では,十二指腸乳頭は発赤し,その周囲に白色調の粗大絨毛状構造が広がっていた。生検ではtubular adenomaであり,各画像検査で膵管・胆管へ浸潤は無く,十二指腸内進展を来した十二指腸乳頭部腺腫と診断した。内視鏡的十二指腸乳頭切除術を施行後,残存した周囲の十二指腸腺腫に対し内視鏡的粘膜切除術(EMR)を追加した。術後は重篤な偶発症はなかった。病理学的には切除断端は陰性で,半年後まで明らかな遺残や再発は認めていない。内視鏡的十二指腸乳頭部切除術は,適応や術後合併症対策,遺残・再発などの諸問題から一般的にはまだ普及していない。本例は十二指腸乳頭部腺腫で十二指腸内へ進展していたが,重篤な合併症も無く分割切除し得た。