症例は 75歳の男性.2016年7月貧血と黒色便を主訴に当科を受診.2年前に施行した上部消化管内視鏡検査では異常を認めなかったが,再検したところ胃体上部後壁に約10cm大の隆起性腫瘍を認めた.同部位からの生検では,多角,類円,紡錘形などの多彩な異型細胞が密に増生しており,未分化肉腫または癌肉腫が疑われた.当初は積極的な治療希望がなかったが,高度貧血が遷延したため出血管理目的で胃全摘術を施行した. 病理組織学的には腫瘍のほとんどを多彩な異型細胞が占めていたが,特定の間葉系組織への分化は認められなかった.免疫組織学的には肉腫様組織は間葉系マーカーが陰性だったのに対し,上皮性マーカーが一部の細胞で陽性を示したことから,sarcomatoid carcinomaと診断した.本疾患の発育進展過程を内視鏡的に経過観察することができた症例であり,胃癌肉腫の発生過程を考えるうえで貴重な症例と考えられた.