理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: CP308
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運動学
脳卒中片麻痺患者の歩行中の下肢筋張力
筋骨格モデルを用いた推定
*小原 謙一山本 哲生甲斐 義弘井上 喜雄川澤 延弘松田 拓也植田 幸一伊勢 眞樹
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抄録
【はじめに】 脳卒中片麻痺患者の歩行は,短下肢装具を使用することにより歩容や速度・安定性などが著しく改善されることは多く経験される.これは,足部変形を矯正し,かつ,装具の発生する補助モーメントが歩行中の下肢筋力を補うことで得られる効果であるが,片麻痺患者の歩行中の筋張力を測定・解析した報告は少ない. 本研究では,三次元動作解析装置(アニマ社製:MA-6250)と床反力計(アニマ社製:FORCE PLATE)を用い,股・膝・足関節の位置,関節角度,加速度,床反力などを筋骨格モデルに適用し,歩行立脚期中の麻痺側下肢筋張力を推定し,分析した.【対象と方法】 対象は,右片麻痺患者(女性,年齢52歳,身長150cm,体重43kg,BRS下肢4-5)の麻痺側立脚期とした. 実験条件として,裸足歩行,底屈制動の確実なシューホン型AFO(以下S)装着歩行およびP-AFO用足継手であるタマラック継手(以下T)付P-AFO装着歩行の3条件とした.硬度・形状の異なるタマラック継手のうち,適切に膝関節制御を行えていると判断された硬度75L型(底屈ストッパ無し)を用いた. 筋骨格モデルとして,股・膝・足関節の矢状面上の運動を司る1.腸腰筋,2.大殿筋,3.大腿直筋,4.広筋,5.ハムストリングス,6.大腿二頭筋短頭,7.前脛骨筋,8.腓腹筋,9.ヒラメ筋の9筋に着目した山崎のモデルを用いた.また,各筋の筋張力Fj(j=1,2,3,…,9)は,下肢に作用する力などから得られる各関節モーメントと,各筋の筋張力により発生する各関節モーメントとの釣り合い式および0FjFmax jを満たし,かつ,評価関数E=(F1+F2+F3+…+F9/Fmax 1+Fmax 2+Fmax 3+…+Fmax 9)が最小となるように最適化手法を用いて求めた.この最適化手法により得られる筋張力パターンと筋電位パターンはよく一致すると報告されている.【結果と考察】  筋張力の推定値において,装具装着により著明な変化が認められたのは腸腰筋(裸足:1094.91±42.22N,S:1961.26±120.42N,T:1319.53±43.9N)と大腿直筋(裸足:675.76±76.37N,S:1224.88±83.47N,T:1169.41±74.01N),広筋(裸足:837.82±101.44N,S:620.99±21.04N,T:523.76±59.95N)であった. SとTを比較すると,膝関節伸展筋群である大腿直筋と広筋は同等の筋張力を示したが,股関節屈曲筋である腸腰筋ではSが著明に高値を示した.このことから,底屈制動(背屈補助モーメント)の差は膝関節よりも股関節にかかる負荷としてより著明に反映されると考えられた.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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