消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
腹腔鏡的胆囊摘出術の適応と限界
川本 智章井戸 健一大谷 雅彦谷口 友志礒田 憲夫鈴木 孝典長嶺 伸彦井岡 達也小祝 宏文木村 健熊谷 真知夫
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1993 年 42 巻 p. 138-142

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抄録

 従来の開腹術に勝る腹腔鏡的胆囊摘出術(ラパ胆)の利点は,尽きるところ,皆無に近い小さな切開創にある。そして,そのために極めて少ない侵襲性と極めて優れたcosmeticがもたらされる。本法がすでに確立されて久しい開腹術にとって代わるために要求される絶対の前提条件は,その安全性である。この安全性の保証は,豊かな経験に基づく優れた技量によってのみもたらされるものである。技術の修得のためのトレーニングの重要性は,いくら強調してもし過ぎることはない。最も重要なことは,安全,確実な手技を行うことである。われわれは,従来の開腹的胆囊摘出術の適応のあるものは,すべてラパ胆の適応とし,上腹部開腹術の既往例,急性胆囊炎,総胆管結石合併例,肝硬変症などに対しても行ってきた。その結果,500例中,開腹移行例は3例であり,合併症による開腹移行例は1例(第1例目)のみであった。ラパ胆が従来の開腹的胆囊摘出術にとって代わるのも時間の問題である。本法は患者のquality of life(QOL)の向上に関しても理想的な手法であるため,今後わが国においても,胆囊摘出術の実態はラパ胆へと大きく変貌していくものと考えられた。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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