消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
総胆管結石合併例に対する腹腔鏡下胆囊摘出術の経験
酒井 滋山川 達郎加納 宣康石川 泰郎本田 拓春日井 尚小長谷 一郎天野 仁館花 明彦直江 哲郎
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1993 年 42 巻 p. 133-137

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抄録

 1990年5月から1992年12月までに434例の腹腔鏡下胆囊摘出術を経験し,このうち総胆管結石を伴う胆囊結石症は21例あった。総胆管結石を合併した症例のうち,16例は術前に内視鏡的乳頭切開術(endoscopic sphincterotomy : EST)または経皮経肝的胆道鏡(percutaneous transhepatic cholangioscopy : PTCS)による截石の後に,本法を施行した。EST後,膵炎を併発し,胆管内の結石を摘出しえなかった1例と巨大胆管結石の1例は,腹腔鏡下に総胆管切開術を行った。術前にESTを行ったうちの2例(9.5%)は,胆囊管と総胆管の間の炎症性変化が著明で,Calot三角の展開が困難であったため,開腹術に移行された。術前にESTを行って截石術をすることは,手術時間や術後在院期間の短縮が得られ,遺残結石が生じた場合の対処が容易であるなどの利点があるので,ESTは総胆管結石を伴う症例には原則として試みるべきである。ESTが困難,あるいは総胆管に多数の結石が存在し,完全な截石が確診できない場合には,腹腔鏡下に胆管を切開し,T-チューブを留置し,術後胆道鏡で遺残結石のないことを確認すべきである。経胆囊管的胆道鏡は結石の有無や胆管病変の確認を目的として行うが,胆管結石の治療としては,可視範囲の限界や結石遺残の問題などがあることを銘記すべきである。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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