消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
42 巻
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内視鏡の器械と技術
  • 吉田 肇, 緑川 昌子, 葛 爾傑, 半田 豊, 大野 博之, 斎藤 徳彦, 松井 秀雄, 高瀬 雅久, 瀧澤 千秋, 三坂 亮一, 川口 ...
    1993 年 42 巻 p. 43-47
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     オリンパス社製上部消化管用試作生検鉗子FB-40K(以下FB-40K)は,カップ部にV字型の切れ込みを入れ,さらにスイング機構をもたせ,食道および胃の接線方向となる病変の生検を,容易かつ的確に行うために改良された鉗子である。今回われわれは,本鉗子を使用する機会を得たので,従来の鉗子(FB-21K,FB-25K)と比較検討した。その結果,目的部位の生検が的確に行える点,操作性に優れている点で,従来の生検鉗子より勝っていたが,少数例で鉗子孔から鉗子が出にくく,また生検時の出血量がやや多いように感じられた。次に食道30症例,胃体部後壁病変27症例の病理組織標本切片について,表面積,深さを比較検討した。その結果FB-40Kは食道平坦病変および胃体部後壁病変の生検において,大きさ,深さの点で優れていた。
  • 横山 靖, 大井田 正人, 荒川 丈夫, 中井 久雄, 菊池 新, 石井 圭太, 田辺 聡, 小泉 和三郎, 三橋 利温, 西元寺 克禮
    1993 年 42 巻 p. 48-50
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     近年,早期食道癌や早期胃癌に対する内視鏡的切除術が広く普及してきているが,通常使われている直視型の処置用内視鏡では,病変の局在部位によっては正面視による処置が困難となり,不完全切除になることが多い。今回,オリンパス社製処置用前方斜視型電子内視鏡を使用する機会を得た。本機種は,視野角100°(前方斜視45°),先端部外径13mmで,鉗子起上を有する2チャンネルスコープである。内視鏡的切除した症例は9症例12病変で,0-Ⅱb型食道癌が1病変,胃腺腫6病変,Ⅱa 4病変,Ⅱc 1病変であった。これらは全例完全切除され,胃体部の小彎および大彎でも操作性は良好であった。以上より,本機種は優れた処置用電子スコープと考えられた。
  • 片山 修, 小栗 康平, 大久保 裕雄, 加藤 明, 小林 誠, 市岡 四象, 大井 至, 戸松 成, 長谷川 みち代, 国保 美知子, 海 ...
    1993 年 42 巻 p. 51-53
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     今回開発された多画素高密度CCD採用電子スコープTV-Endoscope TRE-3000(東芝製)には,4段階のデジタル帯域強調処理をリアルタイムに行うことができる回路が標準装備されている。同装置を用いて1992年6月から11月までに,上部消化管1,051例,内視鏡的逆行性膵胆管造影11例,下部消化管92例の計1,154例に対し,リアルタイムのデジタル帯域強調処理を行った。本装置では1/3インチサイズ27万画素のCCDが採用されているので,デジタル帯域強調処理の水平方向の周波数のピークは,4.3MHzと高く設定されている。原画像よりはF1強調,F2強調,F3強調,F4強調と,デジタル帯域強調のgainが1.5,2.0,2.5,3.0と強くなるに従って,特に近接観察時に微細な粘膜模様や血管模様を強調し,末梢まで明瞭にとらえることができた。
  • 石原 武, 税所 宏光, 山口 武人, 露口 利夫, 長門 義宣, 崔 馨, 伝田 忠道, 永嶋 文尚, 大藤 正雄
    1993 年 42 巻 p. 54-57
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     クリニカルサプライ社製カテーテル一体型血管内視鏡を親子方式経口的胆膵管鏡の子スコープとして臨床応用した。カテーテルはイメージ用ファイバーと光源用ファイバーを内蔵し,径15mmのバルーンを先端5mmの位置に装着している。全長は2,100mm,外径5Frおよび7Frの2種類があり,前者は内径0.5mm,後者は内径1mmのチャンネルを有している。胆膵疾患40症例に使用したところ,胆膵管への挿入率,観察能ともに良好であった。特徴として,細径であり通常のERCP用スコープで利用が可能であること,バルーンによるカテーテル先端のセンタリングが可能なこと,チャンネルを介して吸引,洗浄ができ,ガイドワイヤ誘導下に選択的深部挿入が可能なことがあげられる。同チャンネルを介したフラッシュランプダイレーザーによる胆石破砕も可能であった。今後,光量不足やカテーテル先端の柔軟性,耐久性が改善されれば,胆膵疾患の診断,治療に有用と考えられた。
臨床研究
  • 平川 恒久, 香川 隆男, 廣田 薫, 末岡 伸夫, 小林 正文, 永井 正彦, 桑名 壮太郎, 劉 賓
    1993 年 42 巻 p. 58-62
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     腐蝕性食道炎の内視鏡検査は,早期に安全に施行されるようになった。しかし,その裏付けとなる組織学的検討は少なく,塩酸,水酸化ナトリウム,パラコートによりウサギ実験モデルで食道炎を作製し,内視鏡所見,組織学的検討を施行した。さらに塩酸,水酸化ナトリウム含有の家庭用洗剤も加え検討した。臨床例の腐蝕性食道炎とも比較した。塩酸は低濃度で障害はほとんどないが,高濃度になるほど障害は高度になり,濃度依存性に障害程度が強くなった。水酸化ナトリウムは低濃度でも障害は塩酸に比較し高度で,深部まで認められた。パラコートの内視鏡的所見は酸,アルカリに比較して強くはないが,組織学的に障害は深層まで存在していた。家庭用洗浄剤の検討で,界面活性剤のみでは障害はほとんどなく,塩酸含有剤の障害は,同程度の濃度の塩酸よりは強度であったが,水酸化ナトリウム含有剤では同程度であった。内視鏡所見として,塩酸は濃度により粘膜の色調が正常,粘膜混濁,白濁と変化し,水酸化ナトリウムは濃渡に関係なく白濁と白苔が認められ,パラコートは軽度の粘膜色調の混濁のみであった。臨床例の内視鏡所見と実験モデルの内視鏡所見は類似点が存在したが,臨床例の障害程度の方が条件は異なるが高度であった。
  • 横山 孝典, 岩端 隆彦, 細貝 浩章, 山崎 忠男, 野ツ俣 和夫, 伊藤 慎芳, 桜井 幸弘, 多賀須 幸男, 安部 孝, 池上 文詔
    1993 年 42 巻 p. 63-66
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     一過性の激しい逆流により生じた,急性に経過する逆流性食道炎23例について検討した。活動期の十二指腸潰瘍による幽門狭窄,急性胃粘膜病変,アルコール依存症の過飲後の激しい嘔吐により,胃液の逆流が急激におきたときにみられる。内視鏡的特徴として,発赤,びらん,出血などが,下部食道を中心に全周性,表在性にみられ,通常の逆流性食道炎の病期分類に当てはめることができない。治療としては,H2受容体拮抗薬をはじめとする各種薬剤の投与や生活指導を行っても治癒しないことが多い通常の逆流性食道炎に反して,一過性の原因による激しい胃液の逆流に伴う食道炎は,加療によりその原因が解除されれば,速やかに治癒する。この2つの予後が非常に異なる食道炎を,一括して逆流性食道炎と称すると,例えば薬剤の効果検定を試みるときなどに不都合が生じる。そこで,これを急性逆流性食道炎として分離することが適切であると思われる。病理学的総論でいう“急性”には,症状が激しいことと経過が早いことの意味があり,この病態にふさわしいと考えられ,このことより新しい概念として“急性逆流性食道炎”を提案した。
  • 池田 郁雄, 光永 篤, 中村 真一, 千葉 素子, 春木 京子, 春木 宏介, 加藤 明, 横山 聡, 橋本 洋, 村田 洋子, 鈴木 茂 ...
    1993 年 42 巻 p. 67-68
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     今回われわれは,1985年1月から1992年3月までに内視鏡検査で確認された食道胃接合部の裂創性病変34症例の止血法を検討した。焼灼は7例に行われており,全例一時止血されたが,2例(28.6%)に再出血がみられた。そのうちの1例にクリッピングを行い,完全に止血した。クリッピングのみは6例行い,全例完全に止血され,再出血はみられなかった。縦走する幅の狭い潰瘍では,クリップは縫合と同様の効果をもたらし,確実な止血が得られる。クリップでは止血直後から摂食可能であり,クリップによる食物のつかえ感もなく,必ずしも入院の必要はない。従って,外来で十分治療可能であり,患者の負担が軽減できることから,食道胃接合部裂創性病変に対する有用な治療法と考えられた。
  • 中島 俊之, 勝 健一, 矢部 諭, 石川 恵子, 稲生 実枝, 松田 浩二, 宮本 築生, 中島 美智子, 伊藤 進
    1993 年 42 巻 p. 69-73
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     5年以上経過観察しえた食道静脈瘤合併肝硬変32例を対象として,門脈圧亢進症の進行に伴う側副血行路の増加が,食道静脈瘤内視鏡所見の変化に及ぼす影響について検討した。食道静脈瘤内視鏡所見では,基本色調(C),形態(F),占居部位(L)の3つの因子を解析の対象とし,これら3因子の観察前後における所見の比較より,その程度により4群に分類した。門脈血行動態は超音波断層およびドップラー法により計測した。脾臓の大きさ,門脈系脈管の断面積・径および流速は,各群ともに同様の変化がみられ,差はみられなかった。食道静脈瘤以外の側副血行路の出現の割合は,内視鏡所見の変化がない群で最も高率であった。いずれの群においても同様な門脈血行動態の変化であったにもかかわらず,内視鏡所見の変化に違いがみられたことは,門脈血行の血流分散による影響によって生じたものと考えられた。食道静脈瘤以外の側副血行の存在は,食道静脈瘤硬化療法の適応,効果にも影響があり,食道静脈瘤例における経過観察においては,食道静脈瘤内視鏡所見のみならず食道静脈瘤以外の他の側副血行路を含む門脈血行動態全体を観察していくことが重要であり,さらに長期間食道静脈瘤内視鏡所見に変化がない例においては,食道静脈瘤以外の他の側副血行路の発生を考え,検査を進める必要性が示唆された。
  • 五十嵐 良典, 中村 良一, 矢島 治夫, 菊池 良知, 柳沢 美光, 山本 多カ也, 長谷 弘記, 酒井 義浩
    1993 年 42 巻 p. 74-76
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     1991年6月から1992年5月までに,日産厚生会玉川病院で血液透析を施行している患者で,上部消化管内視鏡を行い,活動性の消化性潰瘍を認めた8例(男性6例,女性2例,平均年齢63歳。胃潰瘍4例,十二指腸潰瘍4例)に,上部消化管内視鏡で潰瘍を確認した日より,オメプラゾール(オメプラール®)20mgを1日1回早朝に投与した。全8例で自他覚症状の改善を認め,内視鏡的に経過観察が可能であった3例では,約1ヵ月後に瘢痕を確認した。全8例とも特に副作用の発現を認めなかった。血漿中濃度を測定した3例においては,透析後は透析前の約10%かそれ以下であった。血中ガストリン値を測定した3例では,いずれも健常人に比して高値であり,そのうち2例では投与後さらに上昇を認めた。オメプラゾールは慢性腎不全例においても健常人と何ら変わることなく投与でき,十分な治療効果が得られると考えられた。
  • 山縣 さゆり, 大井田 正人, 荒川 丈夫, 中井 久雄, 近藤 一英, 今泉 弘, 横山 靖, 西元寺 克禮
    1993 年 42 巻 p. 77-80
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     オリンパス社製,画像入力および画像処理システム(以下IPシステム)を用いた適応型強調処理を行い,得られた画像による早期胃癌浸潤範囲について検討した。固体撮像素子(charge coupled device : CCD)により入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し,注目している周波数成分を最大2,3,5倍に増幅し,3段階の強調処理を行った。褪色群,発赤群ともに周波数強調最大2(Peak 2)の画像が最も良好であり,画像の明瞭化が得られた。褪色群(9例)では,色調,微細血管網,辺縁境界が全例明瞭化され,約8割に有効であった。同色群の1例は,処理前に比し胃小区模様,辺縁境界が明瞭化された。発赤群(5例)では,微細血管網,辺縁境界が全例明瞭化され,全例に有効であった。しかし現時点では処理時間,画像劣化などの問題点もあり,さらに周辺機器の開発と改良が必要と思われた。
  • 掛村 忠義, 山中 桓夫, 吉田 行雄, 松本 博成, 玉城 吉郎, 新井 葉子, 二村 貢, 平川 隆一, 宮田 道夫, 山田 茂樹
    1993 年 42 巻 p. 81-85
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     胃癌の深達度評価における超音波内視鏡は,内視鏡的治療の普及に伴い重要性を増している。常用内視鏡の鉗子孔より挿入可能な超音波マイクロプローブ(先端径2.4mm)による,早期胃癌の深達度評価における有用性について検討した。対象は組織学的検討が可能な早期胃癌5病変と,対照としたⅡc類似進行癌1例である。従来機種の超音波内視鏡では描出しえなかった微小Ⅱc病変を,内視鏡観察下で的確に走査し,高周波を用いて詳細に描写できた。病巣内に潰瘍を伴ったⅡaおよびⅡa+Ⅱcでは,瘢痕線維組織のため深達度を深く判断していた。丈の高い比較的大きなⅠ型では,音波減衰のため,また範囲が広く深いⅡc類似進行癌では,音波減衰やマイクロプローブの描写範囲が狭いこともあり,病変全体をくまなく描写することが容易でなかったため,最深部の描出は困難であった。表在性の比較的小さな病変では鮮明な超音波像が得られ,良い適応と考えられたが,潰瘍合併,超音波減衰,広い病変に対する走査に限界があり,微小浸潤などの問題点が今後の課題と考えられた。超音波マイクロプローブは適応病変や描出能を踏まえたうえで用いれば,早期胃癌の深達度診断において非常に有用な機器であると考えられた。
  • 大上 正裕, 熊井 浩一郎, 山本 貴章, 古川 俊治, 島田 敦, 柴田 三省, 才川 義朗, 小川 信二, 久保田 哲朗, 石引 久弥, ...
    1993 年 42 巻 p. 86-90
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     内視鏡検査と20MHz内視鏡的超音波プローブにより,深達度mと診断された胃癌症例3例(胃体部前壁Ⅱa,胃体部後壁Ⅱa,胃体部大彎Ⅱc)に対して,本邦で初めてすべての手技を腹腔鏡下に行い,病変部より十分に離れた切離線で胃局所切除術を施行した。手術は全身麻酔下で行い,術中胃内視鏡により病変部を確認し,病変の近傍に直針を内蔵したカテーテルを刺入,貫通し,これを腹腔鏡下に胃の壁外に引き出した。カテーテル末端に接続した小金属棒を支持として病巣を吊り上げ,吊り上がった金属棒より十分離して,胃の長軸にそって自動縫合器・Endo GIAにより胃局所切除を行った(lesion lifting法)。切除標本の直径は50-60mmで,病変はほぼ中央に位置し,切離縁からの距離は最短でも6mmあった。組織学的にいずれの症例も,m,ly0,v0であり,根治術と判断した。術後疼痛は軽微で,術翌日より歩行,飲水が可能で,術後2日目から経口食を開始し,術後6日目に軽快退院した。本法は,胃粘膜癌に対して適応を選択することにより,侵襲の小さい優れた治療法になると考える。
  • 関 英一郎, 卜部 元道, 溝渕 昇, 船曳 均, 松村 理史, 榊原 宣
    1993 年 42 巻 p. 91-95
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     幽門部早期胃癌で胃切除を行う際,十二指腸浸潤の有無が問題となる。どのような幽門部早期胃癌が,どのように十二指腸に浸潤するのかを,内視鏡所見を含め臨床病理学的に検討した。当教室で過去10年間に切除された早期胃癌514例のうち,幽門部癌46例(8.9%)を対象とした。そのうち術前内視鏡所見で,癌巣が幽門輪と接していた22例中7例(幽門部癌の15.2%)には,病理組織学的に十二指腸癌浸潤が認められた。しかし,内視鏡的に癌巣の辺縁が幽門輪から離れていた24例には,十二指腸癌浸潤はみられなかった。十二指腸癌浸潤陽性例の特徴は,①内視鏡所見で幽門輪に癌巣が接していた。②肉眼型はⅡc型,あるいはⅡcを主体とした複合型であった。③癌巣の長径が2cm以上で,長軸方向よりむしろ周方向に進展していた。④偽幽門輪の形成を伴っていた。
  • 長谷川 毅, 井上 博和, 小林 博之, 岸 秀幸, 安齋 保, 小川 聡, 安田 正俊, 佐藤 正弘, 前谷 容, 五十嵐 良典, 藤沼 ...
    1993 年 42 巻 p. 96-99
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     対象は1984年1月から1992年8月までに,内視鏡的にスネアを用いてポリペクトミーを施行した10例10病変である。男性5例,女性5例,平均年齢58.2歳であった。10例中9例では摘除後に検体を回収できたが,1例では回収できなかったため,組織学的検索はしえなかった。発生部位は球部3例,下行部7例で,肉眼型は有茎性9例,棍棒状1例であった。大きさは最大で頭部径34mmであった。組織学的には腺腫3例,ブルンネル腺腺腫1例,ブルンネル腺過形成1例,十二指腸囊胞2例,Peutz-Jeghers polyp 1例,脂肪腫1例,不明1例であった。いずれも偶発症を認めず摘除しえた。回収は概して容易であったが,最大のものは幽門を通過せず,経口腸管洗浄液を用いて経肛門的に回収した。十二指腸における内視鏡的ポリペクトミーの適応は,有茎性または亜有茎性で,大きさは頭部径が30mm前後までで,茎の太さが10mm以内と考えられた。頭部径が30mmを超える病変では幽門を越えないことがあり,経肛門的な回収方法が有用と考えられた。
  • 綿貫 文夫, 大和田 進, 中村 正治, 棚橋 美文, 竹吉 泉, 川島 吉之, 小林 功, 佐藤 啓宏, 宮本 幸男, 森下 靖雄
    1993 年 42 巻 p. 100-103
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     現在,大腸内視鏡検査の前処置法としてGolytely法が普及している。今回Golytely服用量の減量と,トイレ施設の問題を解消するための在宅Golytely法を試み,その有用性を検討した。検査前日,睡眠前にセンノシド2錠を内服し,当日朝から自宅で2,000mlのGolytelyを服用し,午後に来院させ大腸内視鏡検査を施行した。被検者の28%が何らかの消化器症状を訴えたが,程度は軽度であった。来院途中に便意および排便を訴えた者は少なく,被検者の95%は検査時の残渣所見も良好であった。また被検者の受容度も良く,在宅Golytely法は安全かつ有用で,試みるべき方法と考える。
  • 岸田 輝幸, 李 峰, 佐藤 順, 藤森 俊二, 南 定, 立川 裕理, 三宅 一昌, 田口 克司, 山門 進, 玉川 恭士, 田口 文彦, ...
    1993 年 42 巻 p. 104-107
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     センナ葉であるCassia angustifolia Vahl(生薬チンネベリーセンナ)とCassia acutifolia Delile(生薬アレキサンドリアセンナ)からなる漢方薬番瀉葉(有効成分はsennoside A,B)による,大腸内視鏡検査前処置法の臨床的有用性について検討した。対象は1992年4月から同年11月の間に,Brown変法による前処置法で注腸造影検査を行い,大腸ポリープと診断した25例である。同一症例に食事制限のない番瀉葉による前処置法で大腸内視鏡検査を行い,入院後,経口腸管洗浄液による前処置法で内視鏡的ポリペクトミーを行った。食事制限の有無,下剤あるいは洗浄液の飲みやすさ,腹痛などの副作用を考慮した時,3つの前処置法のうち番瀉葉を好むものは15例(60%)おり,最も好評であった。腸管洗浄度については,経口腸管洗浄液を用いた前処置法では全例問題がなかったが,番瀉葉を用いた前処置法では不良例が3例(12%)に認められた。結局,番瀉葉による大腸内視鏡検査前処置法は,腸管洗浄効果では経口腸管洗浄液にやや劣るものの,患者には好評であり,臨床症状,血液検査における副作用もほとんどなく,安価であることより,今後,被検者の便通状態を考慮して,番瀉葉および水分摂取量を加減すれば,大腸検査前処置法として臨床的に有用になるものと考えられた。
  • 小林 博之, 井上 博和, 岸 秀幸, 長谷川 毅, 安斎 保, 小川 聡, 安田 正俊, 佐藤 正弘, 星 一, 渡辺 七六, 藤沼 澄夫 ...
    1993 年 42 巻 p. 108-111
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     1988年1月から1992年11月までの5年間に,当院で大腸憩室出血と診断したのは12例あり,男6例,女6例で,平均年齢は71歳(48-86歳)であった。憩室は群発または散発であったため,部位は両側型が11例と多かった。明らかに憩室からの出血を確認できたのは2例であった。非出血群22例と臨床的に比較すると,出血群の男性で喫煙率が67%と高かったが,その他飲酒,高血圧,脂質などに有意差はなかった。憩室炎3例,穿孔1例が併存し,穿孔の1例を除き,内科的に軽快した。再出血は7例あり,内視鏡的に確実な止血処置を施行した2例に再出血はなかった。憩室出血診断の際,緊急内視鏡は不可欠であるが,十分全身管理を行ったうえで,腸管洗浄液などの前処置を使用することで,24時間以内に,より確実な診断,治療が可能になると思われ報告した。
  • 剛崎 寛徳, 藤沼 澄夫, 酒井 義浩, 坂井 謙一, 小沢 政成, 石塚 俊一郎, 石黒 淳, 掛村 忠義, 吉田 光宏, 岸 秀幸, 安 ...
    1993 年 42 巻 p. 112-117
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     1986年1月より1992年3月まで当施設では注腸X線検査を2,230件施行し,結節顆粒集簇型扁平隆起性病変を45例52病変経験した。うち注腸二重造影にてfine network pattern(以下FNPと略)を描出しえた40病変を対象とし,病変の辺縁境界模様,病変の大きさ,腸管粘膜との関連性および組織学的所見とを対比した。病変の辺縁境界模様をはけ状,櫛状,鋸歯状,波状,半月状に5分類し,統計学的対比はx2検定を用い,1%以下の危険率をもって有意とした。腸管の長軸に面しては後4者が多く,長軸に直交する側面では,はけ状模様が有意に多かった。組織学的対比では波状,半月状模様は腺管腺腫に,櫛状,鋸歯状模様は絨毛腫瘍に多く,30mm未満の腺管腺腫では波状,半月状模様が有意に多かった。内視鏡像との対比では色素法が一致した。注腸二重造影法,薄層法の併用によりFNPと病変の辺縁模様の描出は十分可能であり,この知見は内視鏡診断に際して重要事項となろう。
  • 山谷 春喜, 横田 敏弘, 斉藤 大三, 白尾 国昭, 岸本 信三, 石堂 達也, 小黒 八七郎, 石川 勉, 牛尾 恭輔, 杉原 健一, ...
    1993 年 42 巻 p. 118-123
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     1986年1月から1991年8月までの5年7ヵ月間に経験した,同時性多発大腸癌(以下,多発癌)55例122病変の内視鏡的・臨床病理学的諸性状について検討し,さらに同時期に経験した単発大腸癌(以下,単発癌)903例903病変との比較検討も行った。①多発癌の全大腸癌に占める頻度は6%であった。病変数では2癌の症例が86%と最も頻度が高く,深達度では早期癌のみからなる症例の頻度が56%と最も高く,占居部位では直腸・S状結腸の頻度が59%と最も高かった。②多発癌と単発癌の背景因子を比較検討した。性差は,多発癌は単発癌と比較して有意(p<0.01)に男性に多かったが,年齢では有意差は認められなかった。組織型は,多発癌は単発癌と比較して高分化型腺癌の頻度が有意(p<0.01)に高かった。他部位に腺腫を伴っていた頻度についても,多発癌は単発癌に比べてその頻度が有意(p<0.01)に高かった。また単発癌と進行癌のみからなる多発癌群とは,いずれの因子においても極めて近い値を示していた。③多発早期癌と単発早期癌の内視鏡的・臨床病理学的諸性状(性,年齢,肉眼形態,大きさ,占居部位,深達度および組織型)を比較検討した。有意差(p<0.05)が認められたのは形態のみであり,多発癌では単発癌と比較して隆起型(Ⅰp,Ⅰsp)の頻度が高かった。ⅠpあるいはⅠsp型の早期癌が認められた症例における,全大腸内視鏡検査の重要性が示唆された。
  • 千葉井 基泰, 柵山 年和, 高橋 宣胖, 猪又 雄一, 高村 誠二, 大西 健夫, 一志 公夫, 山本 学, 黒田 徹, 高橋 正人, 千 ...
    1993 年 42 巻 p. 124-128
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     われわれは1992年5月から腹腔鏡下腸管切除術を導入し,手技の工夫を加えながら3例に施行し,その有用性および発展性について検討を加えた。Ⅰp typeのS状結腸ポリープ癌のポリペクトミー後,癌断端遺残の症例に対して,腹腔内での機械吻合によるS状結腸切除術を施行した。さらに多発性のⅡa型早期大腸癌および回盲部クローン病に対して,腹腔外での側々吻合による回盲部切除術を施行した。腸間膜の処理には超音波メスを使用し,動静脈を露出した後に確実にクリッピングを行った。平均手術時間は5時間,1例は腸間膜からの出血により開腹術に移行した。全例とも術後経過は良好で,縫合不全は認めず,術後に急性心不全を発症した症例以外は,術後2週目に軽快退院となった。腹腔鏡下腸管切除術は,開腹術に比べ腸管運動の回復が早く,術創も小さく,術後疼痛も軽度であり,今後の発展が期待される有用な手術術式と考えられた。
  • 安齋 保, 長谷川 毅, 小川 聡, 星 一, 佐藤 正弘, 大橋 茂樹, 吉岡 秀樹, 前谷 容, 五十嵐 良典, 酒井 義浩
    1993 年 42 巻 p. 129-132
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     内視鏡的乳頭切開術(endoscopic sphincterotomy : EST)を加えた経乳頭的総胆管結石截石術を施行した後の経過観察中に発症した胆囊炎が,胆囊と胆管を結ぶ胆囊管の形態に関連するか否かを,ERCPの胆道造影の形態から検討した。対象は1985年10月から1992年8月までにESTを施行し,経乳頭的に截石治療した総胆管結石症115例のうち,截石前後に胆囊を有していた71例である。これを胆囊炎発症例と非発症例に分け,年齢および胆囊管径,胆囊管合流部位,合流形式,螺旋構造の有無で比較したところ,胆囊炎発症例は70歳以下に多く,胆囊管径は非発症例に比べて太かった。合流部位,合流形式,螺旋構造には差はなかった。ESTを加えた胆道における胆囊炎の発症は,胆囊管閉塞による発症とは原因が異なる状況が考えられ,逆行性感染もその一要因と想定され,EST後も胆道内の細菌検索や胆囊機能の検索も必要と考えられた。
  • 酒井 滋, 山川 達郎, 加納 宣康, 石川 泰郎, 本田 拓, 春日井 尚, 小長谷 一郎, 天野 仁, 館花 明彦, 直江 哲郎
    1993 年 42 巻 p. 133-137
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     1990年5月から1992年12月までに434例の腹腔鏡下胆囊摘出術を経験し,このうち総胆管結石を伴う胆囊結石症は21例あった。総胆管結石を合併した症例のうち,16例は術前に内視鏡的乳頭切開術(endoscopic sphincterotomy : EST)または経皮経肝的胆道鏡(percutaneous transhepatic cholangioscopy : PTCS)による截石の後に,本法を施行した。EST後,膵炎を併発し,胆管内の結石を摘出しえなかった1例と巨大胆管結石の1例は,腹腔鏡下に総胆管切開術を行った。術前にESTを行ったうちの2例(9.5%)は,胆囊管と総胆管の間の炎症性変化が著明で,Calot三角の展開が困難であったため,開腹術に移行された。術前にESTを行って截石術をすることは,手術時間や術後在院期間の短縮が得られ,遺残結石が生じた場合の対処が容易であるなどの利点があるので,ESTは総胆管結石を伴う症例には原則として試みるべきである。ESTが困難,あるいは総胆管に多数の結石が存在し,完全な截石が確診できない場合には,腹腔鏡下に胆管を切開し,T-チューブを留置し,術後胆道鏡で遺残結石のないことを確認すべきである。経胆囊管的胆道鏡は結石の有無や胆管病変の確認を目的として行うが,胆管結石の治療としては,可視範囲の限界や結石遺残の問題などがあることを銘記すべきである。
  • 川本 智章, 井戸 健一, 大谷 雅彦, 谷口 友志, 礒田 憲夫, 鈴木 孝典, 長嶺 伸彦, 井岡 達也, 小祝 宏文, 木村 健, 熊 ...
    1993 年 42 巻 p. 138-142
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     従来の開腹術に勝る腹腔鏡的胆囊摘出術(ラパ胆)の利点は,尽きるところ,皆無に近い小さな切開創にある。そして,そのために極めて少ない侵襲性と極めて優れたcosmeticがもたらされる。本法がすでに確立されて久しい開腹術にとって代わるために要求される絶対の前提条件は,その安全性である。この安全性の保証は,豊かな経験に基づく優れた技量によってのみもたらされるものである。技術の修得のためのトレーニングの重要性は,いくら強調してもし過ぎることはない。最も重要なことは,安全,確実な手技を行うことである。われわれは,従来の開腹的胆囊摘出術の適応のあるものは,すべてラパ胆の適応とし,上腹部開腹術の既往例,急性胆囊炎,総胆管結石合併例,肝硬変症などに対しても行ってきた。その結果,500例中,開腹移行例は3例であり,合併症による開腹移行例は1例(第1例目)のみであった。ラパ胆が従来の開腹的胆囊摘出術にとって代わるのも時間の問題である。本法は患者のquality of life(QOL)の向上に関しても理想的な手法であるため,今後わが国においても,胆囊摘出術の実態はラパ胆へと大きく変貌していくものと考えられた。
  • 吉岡 秀樹, 井上 博和, 長谷川 毅, 安齋 保, 小川 聡, 佐藤 正弘, 星 一, 大橋 茂樹, 前谷 容, 五十嵐 良典, 酒井 義 ...
    1993 年 42 巻 p. 143-147
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     1990年1月から2年9ヵ月間に,同意を得て内視鏡的純粋膵液採取法を用いて42例の純粋膵液を採取した。これらを日本消化器病学会慢性膵炎検討委員会案の臨床診断基準1)に基づいて3群に分類し,正常群より基準値を設定して,生化学的分析より膵外分泌機能(液量,最高重炭酸塩濃度,アミラーゼ分泌量,リパーゼ分泌濃度,トリプシン分泌濃度)を各群別に比較した。その結果,①Ⅰ群はⅡ群と比較すると,最高重炭酸塩濃度が有意に低値であった。②Ⅰ群は疑診群と比較すると,液量および最高重炭酸塩濃度が有意に低値であった。③Ⅰ群,Ⅱ群をそれぞれ正常群と比較すると,リパーゼ分泌濃度が有意に低値であった。④アミラーゼ分泌量およびトリプシン分泌濃度においては,統計学的有意差を認めなかった。慢性膵炎における膵外分泌機能の障害度を評価するうえで,内視鏡的純粋膵液採取法は有用であり,現行の臨床診断基準における十二指腸液検査より重視されるべきであると考えた。
症例
  • 石橋 智子, 中村 正樹, 梅津 仁, 千葉 周伸, 星野 清志, 吉川 智子, 野中 一興, 木村 佳苗, 中村 洋一, 並木 真生, 下 ...
    1993 年 42 巻 p. 148-150
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は76歳男性。胸やけ,嚥下痛が出現し,摂食不可能となり来院した。内視鏡検査で下部食道に辺縁が隆起した不整形の縦長のびらんを数個認めた。びらん部辺縁の生検組織片の免疫組織学的検索の結果,単純ヘルペスⅠ型(HSV-Ⅰ)による食道炎と診断した。ヘルペス食道炎は悪性腫瘍などによる免疫不全の患者や,剖検時に発見されることが多いとされてきたが,最近では健康成人を含む臨床例の報告も散見されるようになった。ヘルペス食道炎の内視鏡所見の特徴は,辺縁が隆起した浅い打ち抜き状のびらんや潰瘍の多発であり,サイトメガロウイルス(CMV)感染による食道炎と類似している。しかし病理組織的に,ヘルペス食道炎の感染細胞は潰瘍辺縁の扁平上皮細胞に,CMV感染の感染細胞はむしろ潰瘍底の線維芽細胞や血管内皮細胞にみられる。従って,内視鏡でヘルペス食道炎を疑った時は,びらん,潰瘍の底部と辺縁から生検を行うことが重要である。
  • 黒木 尚, 平嶋 登志夫, 片田 雅孝, 済陽 高穂, 岡 誉子, 橋本 洋, 角田 隆文
    1993 年 42 巻 p. 151-153
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     アルカリ服用による腐蝕性食道狭窄の1手術例を経験したので報告する。症例は43歳男性。家族歴 : 同胞10人中4人が自殺にて死亡。既往歴 : 20歳から躁鬱病にて通院治療中,ガス自殺,縊死未遂あり。兄の自殺を契機とし鬱状態となり,アルカリ溶液(NaOH65%,KOH30%)を服用した。緊急内視鏡検査にて,咽頭より十二指腸第二部に至るまでのびらんを認めた。第10病日から切歯列より30cm以下の完全狭窄となり,保存的療法不能のため,3ヵ月目に手術(右開胸開腹,食道亜全摘,胸骨後全胃管挙上,食道胃頸部吻合術)を施行した。術中所見では,気管分岐部以下の胸部食道に約10cmにわたる狭窄を認め,病理組織学的には粘膜層の消失と,一部固有筋層を越えるリンパ球を主とする炎症性細胞浸潤が認められた。術後経過順調にて,症例は術後2ヵ月にて社会復帰した。
  • 平原 美孝, 鶴井 光治, 高橋 秀理, 趙 達来, 月岡 健雄, 片山 信仁, 福永 淳, 奥山 厚, 笹川 道三
    1993 年 42 巻 p. 154-157
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     当センターでは過去6年間に上部内視鏡検査を8,059例に施行し,7例の食道乳頭腫を経験した。性比は,男 : 女=4 : 3であり,平均年齢は53.6歳であった。主訴は,心窩部違和感などの腹部愁訴が5例にみられた。基礎疾患は,肺癌,胃癌の手術後が2例,胃潰瘍が1例にみられた。内視鏡所見では,発生部位は中部食道4例,上部食道3例で,白色調,表面顆粒状の隆起として観察され,山田Ⅲ型の形態が5例と多くみられた。他の2例は,扁平隆起および集簇性小隆起として観察された。随伴した食道・胃病変では,食道裂孔ヘルニア2例,逆流性食道炎1例,胃潰瘍・胃炎各1例みられた。乳頭腫の発生要因との関連で,生検組織を用い,免疫染色法にてhuman papilloma virus antigenの検索を行ったが,全例陰性であった。乳頭腫は,組織学的には同様の形態を呈するが,発生要因は単一でないと考えられた。治療方針は,著者らは生検を機に脱落した2例を含め7例全例の経過を観察しているが,最長4年間で腫瘍に著明な変化は認められず,切除などの処置を加えなくとも,厳重な経過観察で十分と考えている。
  • 真船 健一, 田中 洋一, 藤田 吉四郎, 田久保 海誉
    1993 年 42 巻 p. 158-161
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は56歳女性。胸部つかえ感を主訴として近医を受診し,食道粘膜下腫瘍の診断で当科を紹介された。上部消化管造影にて,胸部上部食道の頸胸境界部に長径2.8cmの陰影欠損が認められた。内視鏡所見では,切歯列より22cmから23cmの8時から1時方向に,表面平滑で正常上皮に被覆された可動性良好な腫瘤が存在した。内視鏡的超音波検査では,比較的低エコーで充実性の腫瘤が食道粘膜下層に認められた。CT検査では,血管に富んだ充実性腫瘍と考えられた。食道粘膜下腫瘍の診断下に,頸部切開,腫瘍核出術を施行し,病理組織学的に海綿状血管腫と診断された。食道血管腫はまれな疾患であるが,内視鏡によるポリペクトミーの進歩により近年報告例が増加している。しかし本症例のように,表面平滑で色調が青色や暗赤色を呈さない報告は少なく,他の食道良性腫瘍との鑑別が困難で,診断治療には十分な注意を要する。
  • 普光江 嘉広, 清水 喜徳, 李 雨元, 李 雅弘, 亀山 秀人, 安藤 進, 谷尾 昇, 村上 雅彦, 新井 一成, 小池 正, 副島 和 ...
    1993 年 42 巻 p. 162-164
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は78歳女性。心窩部痛の精査にて,上部消化管内視鏡を施行したところ,腹部食道に直径1cm弱の不整形のヨード不染帯を指摘された。生検でmoderate dysplasiaが認められたため,strip biopsyを施行したところ,mild dysplasiaの診断を得た。約6ヵ月ごとに経過観察していたところ,1年4ヵ月後に前回とは異なる部位に2ヵ所ヨード不染帯が出現した。いずれも直径1cm弱の不整円形で,生検にて扁平上皮癌が強く疑われたためstrip biopsyを施行したが,それぞれmild,severe dysplasiaであった。前癌病変としての食道dysplasiaを診断するうえで,積極的なstrip biopsyの適応と食道癌のhigh risk groupとしての確実な経過観察の必要性が示唆された。
  • 菅原 和彦, 星原 芳雄, 奥田 近夫, 松岡 正記, 田中 達朗, 橋本 光代, 吉田 行哉, 早川 和雄, 福地 創太郎, 河合 竜子, ...
    1993 年 42 巻 p. 165-168
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     発熱,嚥下障害を主訴に入院した54歳の男性に,上部消化管内視鏡検査で食道のIuからEaに及ぶ黒褐色で血管に富む巨大腫瘤を認めた。この所見およびX線像から,carcinosarcomaを疑った。縦隔リンパ節転移,左主気管支浸潤を認め,肝硬変の合併を認めた。放射線治療を行い,腫瘤はかなり縮小したが,食道外浸潤を生じ,胸腔内へ穿破し,膿胸をおこして死亡した。剖検の組織所見よりso-called carcinosarcomaと診断された。当院では過去5年間の上部消化管内視鏡検査において,食道癌を325例経験したが,carcinosarcomaは本例を含めて3例であった。他の2例は本例のように巨大でなく,病理組織学的にはpseudosarcomaおよびso-called carcinosarcomaと診断された。本例のように食道内腔を閉塞するように巨大に発育した後,食道外に急速に進展したcarcinosarcomaはまれのため報告する。
  • 中村 英美, 井手 博子, 江口 礼紀, 中村 努, 林 和彦, 吉田 一成, 小林 中, 田中 元文, 鈴木 茂, 村田 洋子, 山田 明 ...
    1993 年 42 巻 p. 169-172
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     右側大動脈弓により食道が圧排され,長期の機械的刺激による発癌が示唆された興味ある1例を経験した。症例は52歳男性。2年前からの“胸骨裏面のしみる感じ”を主訴に上部消化管造影検査を施行し,胸部上部食道に圧排所見を認め,食道の粘膜下腫瘍を疑い,内視鏡検査を施行した。上切歯より24cmの部位で,食道は左後壁より強く圧排され拍動し,同部位に1/3周性の0-Ⅱa+Ⅱb型表在癌を認めた。超音波内視鏡検査では,癌腫は大部分が深達度mmで,一部smを疑った。血管造影検査にて右側大動脈弓を確診し,左開胸開腹にて手術を施行した。細い奇静脈弓を認め,食道は大動脈弓と動脈管索により圧排されていた。切除標本では,深達度mmの早期癌であった。本症例のような食道周囲の血管系の異常,また粘膜下腫瘍など食道の隆起性または圧排性病変に対しては,癌の併存を念頭に置き,色素内視鏡検査を併用した注意深い粘膜面の観察と圧排部位からの生検が重要である。
  • 斉藤 雄介, 細井 董三, 西沢 護, 岡田 利邦, 志賀 俊明, 大倉 康男, 北野 伸浩, 松下 郁雄, 金子 弥樹, 長浜 隆司, 松 ...
    1993 年 42 巻 p. 173-176
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は66歳男性。特に自覚症状なく,内視鏡検査を受けた。門歯列より約30cmの後壁に白色顆粒状の隆起と,その肛門側に発赤面が指摘され,ともにヨード不染を示し,0-Ⅱa+Ⅱc型食道表在癌が疑われた。白色顆粒状隆起から計4回生検したが,診断はmoderateないしはsevere atypiaであり,癌の診断に至らなかった。5回目の内視鏡検査で発赤部から生検したところ,癌細胞が全層性に存在し,乳頭状の下方進展も認められ,初めて食道癌の診断が下り,外科手術となった。新鮮切除標本所見と病理組織所見を対比することによって,肉眼的に発赤調の部分では癌細胞が粘膜表面に露出しているのに対し,白色調の部分は粘膜表面がhyperkeratosisによって覆われ,基底層近くに癌細胞が存在していることが判明した。本例のように,hyperkeratosisに癌が合併する症例があることを忘れてはならない。
  • 堤 修, 嶋尾 仁, 門脇 憲, 礒垣 誠, 加藤 康行, 三重野 寛喜, 榊原 譲, 比企 能樹
    1993 年 42 巻 p. 177-180
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は72歳男性。他院で胸部食道癌と診断され,併存疾患のため手術不能と診断され,内視鏡治療目的にて平成3年8月20日紹介入院となった。入院時食道は完全閉塞をきたしていた。8月27日Celestin pulsion tubeを用いて,内視鏡的プロテーゼ挿入術を施行したが,経口摂取改善が得られず,9月19日屈曲型試作プロテーゼ再挿入を行った。その後,経口摂取改善を認め,外来通院となった。通院中プロテーゼ胃内落下のため抜去し,経過観察としたが,平成5年1月まで嚥下障害は全く消失している。内視鏡的に粘膜面には癌の遺残がなく,狭窄も認めない。プロテーゼによる癌の壊死脱落のため,長期経口摂取可能例であると思われる。
  • 中村 典明, 中村 宏, 吉野 邦英, 河野 辰幸, 永井 鑑, 加藤 奨一, 菅野 範英, 原 譲, 遠藤 光夫, 中村 隆
    1993 年 42 巻 p. 181-184
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     近年,気道,胆道への応用が数多く報告されているGianturco型self expandable metalic stent(EMS)を,食道癌術後の移植遊離空腸に対して用いた。症例は70歳女性。頸部食道癌のため,下咽頭,頸部食道,喉頭切除術,遊離空腸再建術を行った。術後縫合不全を合併し,その後,移植空腸は8cm長にわたり全周性狭窄となった。頻回のバルーン拡張術を施行したが,狭窄は改善せず,Gianturco型self EMS(ϕ15×50mm 2個)を挿入したところ,嚥下困難は速やかに改善した。しかし,2週間ほどでステント連結部から粘膜組織が増生し,膜様狭窄を呈した。再度同型ステントでの拡張を試みたが,狭窄部は拡張せず,食道挿管をやむなく併用した。EMSによる拡張は安全かつ容易で,効果的な治療方法である。従って,今後EMSの形状に粘膜増生を防止するような工夫を加えることにより,消化管病変への応用が可能と考えられる。
  • 高木 精一, 高野 つる代, 片桐 昌尋, 佐野 秀弥, 本橋 修, 大川 伸一, 伊藤 義彦, 玉井 拙夫, 幾世橋 篤, 多羅尾 和郎, ...
    1993 年 42 巻 p. 185-188
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は63歳男性。昭和59年7月17日に,Ⅰm,5.5cm,2型の食道癌にて,中下部食道切除,食道胃管胸腔内端々吻合術を施行した。病理組織学的には中分化扁平上皮癌で,深達度はmp,n0,ly0,v0であった。食道癌術後の経過観察中,貧血を指摘され,平成4年2月21日に当科を受診した。内視鏡検査にて,再建胃管の前庭部小彎にⅡc様進行癌を認めた。超音波内視鏡では,深達度pmと診断した。平成4年4月28日に再建胃管癌局所切除を施行した。肉眼的にはリンパ節腫脹を認めず,病理組織学的には高分化型腺癌で,深達度pm,ly1,v0であった。再建胃管癌の本邦報告例54例中,早期癌は12例,そのうち内視鏡治療が行われたものは5例にすぎなかった。食道癌術後の再建胃管より発生する癌はまれではあるが,その早期発見をするために,術後の内視鏡による経過観察が必要である。
  • 東山 明憲, 百瀬 隆二, 溝渕 昇, 小林 滋, 林田 康男, 榊原 宣
    1993 年 42 巻 p. 189-191
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     早期癌患者で全身状態は良好であるにもかかわらず,精神障害や老人性痴呆を併存しているために,手術適応が問題となることがある。今回,食道と胃の同時性早期重複癌の患者で,夜間譫妄と老人性痴呆を併存し,胃癌に対しては開腹手術を,食道癌に対しては内視鏡的切除を施行し,良好な結果が得られたので報告する。症例は69歳男性。約30年前から躁鬱病の診断で投薬を受けていた。平成4年3月頃から上腹部不快感を自覚し,近医を受診した。上部消化管内視鏡検査で,切歯より35cmの食道に約1/3周を占める早期癌を,さらに胃角小彎側にⅡc+Ⅲ型早期癌を認め,手術目的で当科に入院した。一期的開胸開腹手術は困難と考え,胃癌に対し胃亜全摘術を行い,術後第20病日に経内視鏡的食道粘膜切除術を施行した。高齢化し複雑化する社会で,今後,老人性痴呆や精神障害が併存する食道癌症例が増加すると予想される。自験例における内視鏡的粘膜切除術は,社会的適応を考慮した治療法として重要と思われたので報告する。
  • 松村 修志, 常喜 信彦, 中島 俊一, 安田 千香子, 岸 秀幸, 小川 聡, 安田 正俊, 佐藤 正弘, 福本 学, 酒井 義浩, 清水 ...
    1993 年 42 巻 p. 192-196
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は71歳男性。腹部腫瘤を主訴に当科に入院した。心窩部に小児頭大,左臍下部に手拳大の弾性のある腫瘤を触知した。胃X線造影,内視鏡で,体上部から前庭部にかけて,後壁側より著明な壁外性圧排を認めた。腹部CT,MRIでは,最長径約21cmの内部多房性の腫瘤が,周辺臓器を圧排して認められた。腹部血管造影では,左胃動脈の分枝の全体的な伸長を認めたが,濃染像はなかった。小網もしくは胃小彎側原発の腫瘍を疑い,腫瘤摘出術を施行した。腫瘤は胃の小彎側で一体となり,剥離不能のため,合併胃亜全摘術を行った。摘出された腫瘤は19×17×6cmで,漿膜下層を主座として壁外性に発育し,内腔に血液が貯留していた。組織学的には不規則に拡張した管腔構造を認め,大部分は一層の内皮細胞で囲まれた海綿状血管腫の像を示したが,一部に平滑筋組織が介在しており,血管腫と診断した。胃血管腫は本邦で119例が報告されているが,最長径が10cmを超えるものは10例とまれであり報告した。
  • 西川 順一, 広瀬 信夫, 上原 喜夫, 新川 淳一, 佐田 博, 三田村 圭二, 松井 渉, 渋沢 三喜, 副島 和彦
    1993 年 42 巻 p. 197-201
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     2年7ヵ月間の経過中に増大し,術前診断しえた胃平滑筋芽細胞腫の1例を報告した。症例は26歳女性。黒色便,眩暈にて当科受診し,胃体中部後壁に35×30mmの粘膜下腫瘍を認めた。内視鏡下生検を試みたが生検できず,経過観察を行っていたが,2年7ヵ月後に腫瘍は45×40mmに増大し,表面に深い粘膜欠損を認めた。内視鏡下生検およびcolor Doppler-endoscopic ultrasonography(CD-EUS)guide tunnel biopsyにて,腫瘍は胃平滑筋芽細胞腫と診断され,胃亜全摘およびリンパ節郭清術を施行した。手術時,肝転移,腹膜播種は認めなかったが,Ⅰ群リンパ節1個に転移を認めた。胃粘膜下腫瘍の確定診断に,CD-EUS guide tunnel biopsyは,出血,穿孔などの合併症がなく,安全,確実に腫瘍組織の採取が可能で,診断率も高く,有用な方法である。また胃平滑筋芽細胞腫は,悪性化する可能性を有し,本症例のような転移例も認められるため,悪性腫瘍に準じた十分な手術が必要である。
  • 萩原 徹, 武村 隆弘, 横手 美智子, 久山 泰, 大沢 仁, 山中 正己, 横畠 徳行, 冲永 功太, 今村 哲夫
    1993 年 42 巻 p. 202-205
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は53歳男性。検診にて平成元年から胃に異常陰影を指摘され,当科にて精査を行った。胃内視鏡検査にて,胃体上部大彎にbridging foldを伴う直径約4cm大の粘膜下腫瘤を認め,表面にはdelleを有し,cysticで軟らかいものであった。これに対し,吸引細胞診を施行したが,悪性所見は認めなかった。平成3年,腹部単純X線写真にて同部に石灰化を認め,内視鏡的にも増大傾向が認められたため,当院第2外科にて胃楔状切除を施行した。粘膜下腫瘤は一部cysticであり,囊胞内液は漿液性で,生化学検査ではアミラーゼが15,990単位と著明な高値を示した。また組織学的には,石灰化を伴う巨大迷入膵と診断され,まれな症例と考え報告する。
  • 半田 豊, 緑川 昌子, 篠原 聡, 葛 爾傑, 森田 重文, 大野 博之, 斎藤 徳彦, 吉田 肇, 松井 秀雄, 滝沢 千晶, 高瀬 雅 ...
    1993 年 42 巻 p. 206-208
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は72歳男性。検診にて胃の異常を指摘され当科を受診した。噴門部のⅡaと診断し,手術を勧めたが拒否し,明らかな遠隔転移の所見を認めなかったため,レーザー治療の適応として,以後6年間照射を行った。その結果,明らかな増大傾向などなく,経過良好と考えられた。その後,老人性痴呆などが出現したため,治療の継続が困難となり,年1回の内視鏡的経過観察とした。治療中止後2年目に,癌巣と離れた胃体部に巨大な潰瘍性病変を認め,生検の結果T cell typeの悪性リンパ腫と考えられた。また全身性のリンパ腫を疑う所見は認められず,胃原発のものと思われた。本症例は,胃癌の経過観察中,胃原発の悪性リンパ腫の発生をみたもので,両者の因果関係は不明であるが,癌の存在に対する異常な免疫反応の結果,悪性リンパ腫が発生したという可能性も示唆され,共存腫瘍の発生を考えるうえで興味深い1例であると思われる。
  • 牧野 哲也, 林 外史英, 菊地 誠, 川崎 英
    1993 年 42 巻 p. 209-212
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は54歳男性。胃X線検査および胃内視鏡検査により,多発胃癌の診断にて胃切除術を施行した。多発胃癌は高齢者に多いとの報告があるが,本症例は高齢ではなかった。術前の胃X線検査および胃内視鏡検査にて,陥凹性病変(Ⅱc)が4ヵ所,隆起性病変(Ⅱa+Ⅱc)が1ヵ所に指摘されており,術後の切除標本の肉眼所見にて,もう1ヵ所陥凹性病変(Ⅱc)が発見された。それぞれの深達度は,mが3病巣,smが3病巣であった。多発胃癌は,過去の報告では2-4病巣が多く,6病巣はまれであるので報告する。
  • 山村 真吾, 西川 滋人, 金子 操, 長瀬 裕平, 友野 寛樹, 馬場 義一, 松丸 一彦, 黒沢 進, 正岡 一良, 屋嘉比 康治, 中 ...
    1993 年 42 巻 p. 213-216
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     胃の腺扁平上皮癌は比較的少ない疾患である。ことに胃切除後に発生した,食道噴門部と連続性を認めない腺扁平上皮癌は極めてまれである。今回われわれは,胃癌の術後30年後に発生した残胃空腸吻合部のBorrmann 3型の腺扁平上皮癌を経験した。患者は62歳男性。胸腹部痛・黒色便を主訴に来院し,血液学的検査にて貧血を認めた。内視鏡検査で残胃空腸吻合部に出血性潰瘍を伴う不整形隆起を認め,生検の結果,腺扁平上皮癌と診断した。遠隔転移を認めなかったため手術を施行した。術後診断は,残胃空腸吻合部大彎側の7.0×5.0cmのBorrmann 3型進行癌で,中心発育型の腺扁平上皮癌,H0,P0,S2,N2(+)であった。組織学的には,腺癌成分としてはsolid and tubular patternの中分化型腺癌であり,同一の腺腔内に腺癌と扁平上皮癌の混在する所を散見することより,扁平上皮癌の発生機転として,腺癌の扁平上皮化生であることが考えられた。
  • 才川 義朗, 熊井 浩一郎, 小川 信二, 島田 敦, 柴多 三省, 古川 俊治, 山本 貴章, 久保田 哲朗, 吉野 肇一, 石引 久弥, ...
    1993 年 42 巻 p. 217-219
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     最近4年間の当科における胃癌術後吻合部狭窄5例に対する内視鏡的治療について検討した。症例の内訳は男性3例,女性2例で,平均年齢58.2歳であった。手術術式は胃亜全摘術2例,胃全摘術2例,胃空腸吻合術1例であり,いずれも断端再発は認められなかった。治療は4例が内視鏡的拡張術が有効であり,内視鏡自体による拡張術が1例,バルーンによる拡張術が1例,高周波電気メスによる内視鏡的切開術にバルーンによる拡張術を併用した方法が2例に施行された。特に高度な狭窄症例に対しては,バルーン拡張術と切開拡張術との組み合わせが,より効果的な方法であった。
  • 篠田 政幸, 種ケ島 和洋, 小島 正夫, 深瀬 達, 荻原 智信
    1993 年 42 巻 p. 220-223
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     胃全摘術後の脳梗塞の患者(75歳男性)に,経皮内視鏡的空腸瘻造設術を行った。この方法は従来からpull法やpush法で行われているが,われわれは腹壁に癒着していると思われた空腸にintroducer法で施行した。術後まもなく皮膚への腸液漏がみられたが,短期間で消失した。本法は,胃に対する手術の既往があるために,胃瘻を作れない患者の長期経管栄養に有用な手段と考え報告する。
  • 岩村 太郎, 佐藤 薫隆, 斎藤 節
    1993 年 42 巻 p. 224-227
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は78歳女性。主訴は右季肋部痛,発熱(38.4℃)。胃X線,内視鏡で十二指腸球部にBorrmann1型の高分化型腺癌を認め,また胃体中部前壁の示指頭大の隆起より胃内へ多量の排膿がみられ,Klebsiella oxytocaα-Streptococcusなどの上部消化管の常在菌が検出された。腹部CTでは,十二指腸は胆囊,肝門部まで一塊となった腫瘤を形成し,その前面に胃前壁と連続する膿瘍の存在が示唆された。平成4年5月27日,試験開腹。十二指腸,胆囊,肝臓,横行結腸および胃前壁が一塊となり,胃前壁の胃内への穿通部の生検において,腫瘍の浸潤の所見を得た。本症例は,十二指腸球部癌の浸潤により胃体部前壁において壊死から胃内腔に穿通し,逆行性感染の結果,膿瘍が形成され,内容が胃内腔に排膿されていたと考えられた。今回われわれの検索しえた範囲ではこのような報告例はなく,非常にまれな例と思われたので報告した。
  • 高久 仁利, 田代 秀夫, 若林 真理, 楠山 明, 村井 隆三, 安藤 博, 伊坪 喜八郎
    1993 年 42 巻 p. 228-231
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     今回われわれは,62歳女性の十二指腸球部のポリープに対して,超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography : EUS)を施行したところ,ポリープ内部に散在する低エコー領域を認め,またポリープ基底部では,粘膜下層の連続性が保たれていることを確認し,内視鏡的ポリペクトミーを施行した。病理組織所見は,ポリープ実質内に多数の拡張した腺管を伴った過形成性ポリープで,切除断端にも悪性の所見は認められなかった。EUSはポリープの内視鏡的切除の適応においても有用であると思われた。
  • 根岸 道子, 鳥居 明, 中林 知子, 石井 隆幸, 松岡 美佳, 浅川 博, 田中 文彦, 桜井 隆弘, 加藤 慎一, 稲玉 英輔, 日野 ...
    1993 年 42 巻 p. 232-235
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は73歳女性。主訴は右上腹部痛。血液検査では,肝胆道系酵素,CA19-9,エラスターゼⅠが上昇し,画像診断上,胆囊内胆石と総胆管,肝内胆管,膵管の拡張を認めた。内視鏡検査にて,Vater乳頭部の腫大,発赤を認め生検したが,組織診断では炎症性変化のみであった。臨床所見より非露出型乳頭部癌を疑い,膵頭十二指腸切除術を施行した。乳頭部腫瘤は平滑で,大きさ4×3.5×3cm,漿膜浸潤,遠隔転移はなかった。組織学的には低悪性度のカルチノイドで,Grimelius染色陽性,Fontana-Masson染色陰性であった。十二指腸Vater乳頭部カルチノイドは,本邦では30例の報告をみるにすぎず,比較的まれな疾患であり,胆石合併例は2例のみであった。本症例では腫瘤の緩徐な発育が胆石形成へ関与したことも考えられ,興味ある症例と思われ報告した。
  • 藤澤 秀樹, 越川 尚男, 吉岡 茂, 近藤 英介, 大和田 耕一
    1993 年 42 巻 p. 236-239
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は73歳男性。食後の上腹部痛と前胸部圧迫感を訴え,内視鏡検査で十二指腸第3部に白色調,光沢を有し,顆粒状ないし結節状の広基性ポリープを認めたため,内視鏡的ポリペクトミーを行った。大きさ26×23×18mm。組織学的診断は腺管腺腫で,悪性の変化は認めなかった。Paneth細胞も認めなかった。本邦で内視鏡的に切除された十二指腸良性腫瘍報告例は244例であり,第1・2部に94%,第3部に11例4.5%。また広基性は20例9.2%,有茎-亜有茎性は91%であった。腺腫は55例23%。第3部には4例1.6%で,この症例のみが広基性ポリープであった。腺腫で,20mmを超えるもの,絨毛化を認めるもの,乳頭部に発生するものには癌化例が多く認められ,特にGroup Ⅲの場合には,可及的に内視鏡的切除術を行い,癌が発見され,粘膜下浸潤があれば追加手術を行うべきであると考えられた。十二指腸腺腫の部位,形状が珍しく,早期癌との関係を考えるうえで示唆に富み報告した。
  • 川上 健吾, 佐藤 博文, 道伝 研司, 神林 清作, 小島 道久, 河村 攻, 大原 裕康, 松下 和彦
    1993 年 42 巻 p. 240-243
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は58歳女性。1987年に上部消化管内視鏡検査により,十二指腸乳頭部腫瘍と診断した。生検の結果は,軽度の異型を伴うものの,明らかな浸潤像は認めない良性の腺腫であった。以後,およそ半年に1度の内視鏡検査によって経過観察を行った。1992年に行った生検により,細胞および構造異型性がさらに高度となり,腺腫から癌への移行が疑われたため,開腹下に十二指腸を切開し,乳頭部腫瘍を全摘除した。摘出標本の病理組織学的検索では,腫瘍は完全切除されており,やや高度な異型を伴うが,明らかな癌化巣は認められない腺腫であった。十二指腸乳頭部腺腫において,癌腫共存を術前に正診することは困難であり,その取り扱いについては異論も多い。悪性を疑う段階では,まず乳頭全摘除術を施行すべきと考えられる。本例は厳重な経過観察の結果,最小限の手術侵襲で根治することができた。
  • 佐和田 哲也, 田代 義教, 平井 貴志, 岡田 義和, 遠藤 素夫, 古川 秀和, 竹内 勝啓, 小橋 恵津, 椿 浩二, 桑山 肇, 岩 ...
    1993 年 42 巻 p. 244-247
    発行日: 1993/06/18
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     門脈圧亢進症に伴う静脈瘤は主に食道静脈瘤であり,小腸静脈瘤はまれである。今回われわれは,3例の小腸静脈瘤を経験した。症例1は64歳女性で,下血を主訴に入院。内視鏡検査にて十二指腸下行脚に静脈瘤が認められた。症例2は43歳男性で,強度貧血を主訴に入院。内視鏡検査にて十二指腸下行脚静脈瘤と診断し,経皮経肝門脈塞栓術を行った。症例3は40歳女性で,下血を主訴に入院。経皮経肝門脈造影にて上腸間膜静脈の回腸枝に静脈瘤を認め,回腸静脈瘤と診断し,開腹手術を行った。以上,十二指腸静脈瘤2例と回腸静脈瘤1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告した。
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