消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
逆流性食道炎に合併したヘルペス食道炎の1例
石橋 智子中村 正樹梅津 仁千葉 周伸星野 清志吉川 智子野中 一興木村 佳苗中村 洋一並木 真生下 正宗加藤 敏明
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キーワード: ヘルペス食道炎, HSV-Ⅰ
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1993 年 42 巻 p. 148-150

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抄録

 症例は76歳男性。胸やけ,嚥下痛が出現し,摂食不可能となり来院した。内視鏡検査で下部食道に辺縁が隆起した不整形の縦長のびらんを数個認めた。びらん部辺縁の生検組織片の免疫組織学的検索の結果,単純ヘルペスⅠ型(HSV-Ⅰ)による食道炎と診断した。ヘルペス食道炎は悪性腫瘍などによる免疫不全の患者や,剖検時に発見されることが多いとされてきたが,最近では健康成人を含む臨床例の報告も散見されるようになった。ヘルペス食道炎の内視鏡所見の特徴は,辺縁が隆起した浅い打ち抜き状のびらんや潰瘍の多発であり,サイトメガロウイルス(CMV)感染による食道炎と類似している。しかし病理組織的に,ヘルペス食道炎の感染細胞は潰瘍辺縁の扁平上皮細胞に,CMV感染の感染細胞はむしろ潰瘍底の線維芽細胞や血管内皮細胞にみられる。従って,内視鏡でヘルペス食道炎を疑った時は,びらん,潰瘍の底部と辺縁から生検を行うことが重要である。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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