消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
アルカリ服用による腐蝕性食道狭窄の1手術例
黒木 尚平嶋 登志夫片田 雅孝済陽 高穂岡 誉子橋本 洋角田 隆文
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1993 年 42 巻 p. 151-153

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抄録

 アルカリ服用による腐蝕性食道狭窄の1手術例を経験したので報告する。症例は43歳男性。家族歴 : 同胞10人中4人が自殺にて死亡。既往歴 : 20歳から躁鬱病にて通院治療中,ガス自殺,縊死未遂あり。兄の自殺を契機とし鬱状態となり,アルカリ溶液(NaOH65%,KOH30%)を服用した。緊急内視鏡検査にて,咽頭より十二指腸第二部に至るまでのびらんを認めた。第10病日から切歯列より30cm以下の完全狭窄となり,保存的療法不能のため,3ヵ月目に手術(右開胸開腹,食道亜全摘,胸骨後全胃管挙上,食道胃頸部吻合術)を施行した。術中所見では,気管分岐部以下の胸部食道に約10cmにわたる狭窄を認め,病理組織学的には粘膜層の消失と,一部固有筋層を越えるリンパ球を主とする炎症性細胞浸潤が認められた。術後経過順調にて,症例は術後2ヵ月にて社会復帰した。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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