発熱,嚥下障害を主訴に入院した54歳の男性に,上部消化管内視鏡検査で食道のIuからEaに及ぶ黒褐色で血管に富む巨大腫瘤を認めた。この所見およびX線像から,carcinosarcomaを疑った。縦隔リンパ節転移,左主気管支浸潤を認め,肝硬変の合併を認めた。放射線治療を行い,腫瘤はかなり縮小したが,食道外浸潤を生じ,胸腔内へ穿破し,膿胸をおこして死亡した。剖検の組織所見よりso-called carcinosarcomaと診断された。当院では過去5年間の上部消化管内視鏡検査において,食道癌を325例経験したが,carcinosarcomaは本例を含めて3例であった。他の2例は本例のように巨大でなく,病理組織学的にはpseudosarcomaおよびso-called carcinosarcomaと診断された。本例のように食道内腔を閉塞するように巨大に発育した後,食道外に急速に進展したcarcinosarcomaはまれのため報告する。