消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
原発性十二指腸球部癌に合併した胃膿瘍の1例
岩村 太郎佐藤 薫隆斎藤 節
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キーワード: 胃膿瘍
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1993 年 42 巻 p. 224-227

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抄録

 症例は78歳女性。主訴は右季肋部痛,発熱(38.4℃)。胃X線,内視鏡で十二指腸球部にBorrmann1型の高分化型腺癌を認め,また胃体中部前壁の示指頭大の隆起より胃内へ多量の排膿がみられ,Klebsiella oxytocaα-Streptococcusなどの上部消化管の常在菌が検出された。腹部CTでは,十二指腸は胆囊,肝門部まで一塊となった腫瘤を形成し,その前面に胃前壁と連続する膿瘍の存在が示唆された。平成4年5月27日,試験開腹。十二指腸,胆囊,肝臓,横行結腸および胃前壁が一塊となり,胃前壁の胃内への穿通部の生検において,腫瘍の浸潤の所見を得た。本症例は,十二指腸球部癌の浸潤により胃体部前壁において壊死から胃内腔に穿通し,逆行性感染の結果,膿瘍が形成され,内容が胃内腔に排膿されていたと考えられた。今回われわれの検索しえた範囲ではこのような報告例はなく,非常にまれな例と思われたので報告した。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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