抄録
症例1は35歳男性(国籍 : カメルーン)。1992年1月,粘血便を主訴に受診。便潜血反応陽性を認めたため,大腸内視鏡検査を施行し,上行結腸下部の粘膜に刺入した白色調の寄生虫を認めた。虫体は鉗子にて摘出し,検索の結果,鞭虫の雌成虫であった。虫体摘出後も症状持続し,メベンダゾール投与にて軽快した。症例2は29歳男性。1991年1月,2年前から持続する左側腹部痛を主訴に来院。大腸X線検査にて横行結腸にポリープを疑ったが,大腸内視鏡検査にて盲腸の粘膜に刺入した寄生虫を8匹認めた。虫体は鉗子にて摘出し,検索の結果,アニサキス幼虫であった。主訴との関連は考えにくく,緩和型大腸アニサキス症と診断した。大腸内視鏡により腸管寄生虫症を確認し摘出した症例はまれであり,本邦報告例とともに若干の考察を加え報告した。