抄録
46歳男性。平成2年から約2年間ネパールに滞在し,時々生水,生野菜などを摂取していた。帰国後,皮膚の黄染および全身倦怠感を主訴として当科を受診し,急性A型肝炎の診断で入院した。入院中に軟便および腹部不快感が持続したため,大腸内視鏡を施行し,盲腸底に白色の細長い虫体を発見し,内視鏡下に虫体を摘出した。虫体は全長29mmの鞭虫であることが同定されるとともに,症状の改善も認めた。最近,鞭虫症の報告例はまれであるが,A型肝炎を偶然合併し,内視鏡下に虫体を発見し摘出しえた1例を経験したので,文献的考察を加え報告した。