1993 年 42 巻 p. 91-95
幽門部早期胃癌で胃切除を行う際,十二指腸浸潤の有無が問題となる。どのような幽門部早期胃癌が,どのように十二指腸に浸潤するのかを,内視鏡所見を含め臨床病理学的に検討した。当教室で過去10年間に切除された早期胃癌514例のうち,幽門部癌46例(8.9%)を対象とした。そのうち術前内視鏡所見で,癌巣が幽門輪と接していた22例中7例(幽門部癌の15.2%)には,病理組織学的に十二指腸癌浸潤が認められた。しかし,内視鏡的に癌巣の辺縁が幽門輪から離れていた24例には,十二指腸癌浸潤はみられなかった。十二指腸癌浸潤陽性例の特徴は,①内視鏡所見で幽門輪に癌巣が接していた。②肉眼型はⅡc型,あるいはⅡcを主体とした複合型であった。③癌巣の長径が2cm以上で,長軸方向よりむしろ周方向に進展していた。④偽幽門輪の形成を伴っていた。