消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
早期胃癌(m癌)に対するlesion lifting法による腹腔鏡下胃局所切除術
大上 正裕熊井 浩一郎山本 貴章古川 俊治島田 敦柴田 三省才川 義朗小川 信二久保田 哲朗石引 久弥北島 政樹松井 英男
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1993 年 42 巻 p. 86-90

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抄録

 内視鏡検査と20MHz内視鏡的超音波プローブにより,深達度mと診断された胃癌症例3例(胃体部前壁Ⅱa,胃体部後壁Ⅱa,胃体部大彎Ⅱc)に対して,本邦で初めてすべての手技を腹腔鏡下に行い,病変部より十分に離れた切離線で胃局所切除術を施行した。手術は全身麻酔下で行い,術中胃内視鏡により病変部を確認し,病変の近傍に直針を内蔵したカテーテルを刺入,貫通し,これを腹腔鏡下に胃の壁外に引き出した。カテーテル末端に接続した小金属棒を支持として病巣を吊り上げ,吊り上がった金属棒より十分離して,胃の長軸にそって自動縫合器・Endo GIAにより胃局所切除を行った(lesion lifting法)。切除標本の直径は50-60mmで,病変はほぼ中央に位置し,切離縁からの距離は最短でも6mmあった。組織学的にいずれの症例も,m,ly0,v0であり,根治術と判断した。術後疼痛は軽微で,術翌日より歩行,飲水が可能で,術後2日目から経口食を開始し,術後6日目に軽快退院した。本法は,胃粘膜癌に対して適応を選択することにより,侵襲の小さい優れた治療法になると考える。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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