1993 年 43 巻 p. 120-122
膵癌患者の入院時における上部・下部消化管内視鏡検査の異常所見について検討した。入院前後1ヵ月間に上部消化管内視鏡検査(142例)か大腸内視鏡検査(28例)が施行された膵癌146例(頭部癌69例,鉤部癌9例,体部癌49例,尾部癌19例)を対象とし,膵癌の周囲消化管への直接浸潤所見に関して検討した。胃内視鏡検査では,142例中42例(圧排所見33例,浸潤所見9例)30%に異常を認め,膵体部癌,膵尾部癌で39%,47%とその頻度が高かった。十二指腸下行脚の内視鏡検査では,122例中43例(圧排所見15例,浸潤所見28例)35%に異常を認め,膵頭部癌と膵鉤部癌が44%,57%と高率であった。大腸内視鏡検査では28例中6例21%に,横行結腸の狭窄・閉塞が認められ,うち5例が膵尾部癌であった。パンエンドスコピーが普及した現在,日常検査で進行膵癌を見逃さないための注意が必要である。