消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
胃脂肪腫の1例
中村 啓溝渕 昇勝浦 康光前川 武男榊原 宣
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キーワード: 胃脂肪腫
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1993 年 43 巻 p. 146-149

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抄録

 症例は43歳男性。上腹部不快感を主訴に近医を受診した。胃粘膜下腫瘍の診断で,平成5年1月5日当科に紹介入院された。胃X線検査で胃前庭部に直径5cm大の境界明瞭,表面平滑な腫瘤状陰影を認めた。胃内視鏡検査でも同部に急峻な立ち上がりをもった半球状の腫瘤を認め,鉗子の圧迫でcushion signを認めた。超音波内視鏡で胃壁第3層に連続してhigh echoを示す充実性腫瘍像を認めた。内部は不均一で隔壁が認められた。以上より胃脂肪腫と診断したが,超音波内視鏡所見で胃脂肪肉腫も完全に否定できなかった。平成5年1月22日,幽門側胃切除術を施行した。病理組織検査では脂肪腫の診断であった。胃脂肪腫は比較的まれな疾患であり,本邦167例の報告があるのみである。平均年齢58.5歳,女性にやや多く,占拠部位はA領域,長径5cm以下のものが多数を占めていた。脂肪腫に特徴的な症状はなく,術前診断がつかないため胃切除術が行われる症例が多かった。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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