消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
大量下血により診断に至った転移性胃悪性黒色腫の1例
斎藤 真理松岡 幹雄三屋 公紀高尾 正彦松山 小太郎堂森 興一郎高谷 育男岡崎 博関沢 英一
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キーワード: 転移性悪性黒色腫
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1993 年 43 巻 p. 163-165

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抄録

 症例は63歳男性。1989年,右母指に悪性黒色腫を認め,腫瘍切断術が行われた。1992年には肺と脳への転移が確認された。その後1992年12月に大量下血を生じ,重症貧血を呈した。上部消化管内視鏡検査で,胃体上部から下部にかけて,発赤を伴い中心に陥凹を有する多発性隆起性病変を認めた。生検から悪性黒色腫の胃転移と診断された。観察時には出血は認めなかったが,粘膜下腫瘍の表面からの大量出血を生じたものと推定された。一般に胃転移性腫瘍は血行性あるいはリンパ行性に粘膜下層に浸潤増殖するため,早期より出血することは少ないとされている。また,悪性黒色腫の転移層はhypovascularとする報告もあるが,本症例のような広範囲転移例ではhypervascularであることが多いとされている。従って,病変部の腫瘍血管が破綻した結果,大量の出血に至ったものと思われる。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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