症例は60歳女性。主訴は心窩部痛。胃X線および内視鏡で胃角部後壁にⅡc+Ⅲ様進行癌を疑わせる病変を認めたが,生検(前医および当院第1回目)ではGroup Ⅱであった。当院第2回目の生検組織診ではGroup Ⅳ,adenocarcinoma,tub1と診断され,1992年2月17日胃亜全摘が施行された。切除標本の病理組織学的診断では,多彩な組織像を示した胃腺扁平上皮癌であった。病変中央の潰瘍底(Ul Ⅱ)に中分化型扁平上皮癌が認められ,腺癌に関しては分化度が高く,細胞異型と構造異型に乏しく,高好酸性細胞や食道腺導管様多列円柱上皮が粘膜筋板を越えて存在した。さらに多量の粘液を含有した細胞や印環細胞が腺癌と扁平上皮癌辺縁で混在する領域が認められ,腺癌成分と扁平上皮癌成分の移行帯を示唆する所見と思われた。