抄録
症例は71歳女性。右下腹部腫瘤を主訴に精査加療目的で入院した。大腸X線検査では回腸末端から盲腸,上行結腸にかけ外側後方からの壁外性の圧排が認められ,虫垂腫瘍,後腹膜腫瘍が疑われた。大腸内視鏡検査では盲腸から上行結腸下部にかけ後壁からの壁外性の隆起がみられた。虫垂入口部は盲腸内腔が狭小化して観察不可能であったが,その肛門側に腫瘍の一部が露出しており,同部の組織学的検査で粘液産生性の腺癌の診断となった。CT,超音波,血管造影検査で腫瘍の腸管壁外での囊胞状発育が示唆され,囊胞型の虫垂癌の診断のもとに右半結腸切除術を施行した。術中所見では肝転移,腹腔内転移,リンパ節転移は認めず,摘出標本では虫垂からの囊胞状腫瘍の発生が認められ,盲腸,上行結腸に壁外性の浸潤を示し,腫瘍の一部は上行結腸内へ露出していた。囊胞状腫瘍は粘液が充満していた。