1993 年 43 巻 p. 204-207
症例は58歳男性で,1987年5月食思不振にて当科を受診し,内視鏡検査にて悪性リンパ腫と診断され,以後5年間にわたり経過観察された。初診時の消化管病変は,胃,十二指腸,大腸ともに表層に限局し,超音波内視鏡(EUS)検査では胃壁の肥厚は認めなかった。生検にて悪性リンパ腫(diffuse medium cell type)を認め,免疫染色では胃,十二指腸,大腸ともに同一のモノクロナリティーを認めた。化学療法を年2回の割合で施行し,消化管病変は消長を繰り返したが,1991年8月,扁桃およびリンパ節の腫張を認め,同時期に消化管にも隆起性病変,深い潰瘍性病変および消化管壁の肥厚が出現し,形状が変化した。これらより,消化管病変は全身性悪性リンパ腫によるものと考えられ,全身性の悪性リンパ腫の消化管病変は他病変と同様の経過を示すことが示唆された。