1993 年 43 巻 p. 267-270
症例は69歳男性。右下腹部痛を主訴に当科受診。理学的所見では,右下腹部に鶏卵大の腫瘤を触知した。大腸X線検査で回盲部に5cm大の中心陥凹を伴う不整形の隆起性病変を認め,大腸内視鏡検査では同部位に表面凹凸不整,易出血性の腫瘍が認められた。生検組織標本では,高分化型腺管腺癌と一部に粘液産生が認められた。大腸超音波内視鏡検査では,腫瘍は低エコーから等エコーの不均一な内部エコーを有し,5層構造は消失していた。以上より大腸粘液癌と診断し,手術を施行した。手術所見では回盲部に5×6cmの漿膜に及ぶ腫瘍で,所属リンパ節の腫大を認め,病理学的には粘液癌と診断された。大腸粘液癌は早期のリンパ節転移がみられ,予後不良であり,術後診断されることが多く,術前に診断しえた症例は比較的まれであり報告した。