1993 年 43 巻 p. 83-86
内視鏡的食道静脈瘤結紮術(endoscopic variceal ligation,EVL)前後における食道静脈瘤および側副血行路の血行動態を,カラードプラ超音波内視鏡(color Doppler endoscopic ultrasonography,CD-EUS)にて観察し,EVLによる血行動態の変化について臨床的検討を加えた。EVLを施行した食道静脈瘤症例24例中,CD-EUSにてEVL前後またはEVL後に血行動態の観察を行った11例について,食道壁内,壁外および供血路の血流について検討した。その結果,①EVLの治療効果がCD-EUSにより血行動態的に判定可能であった。②治療有効例では食道壁内の血流消失や減少を認めた。③食道壁外や供血路などの深部血行路は,血行動態的に著変を認めなかった。付随所見として,食道壁の肥厚がEISの既往を有する症例で観察された。EVLは内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy,EIS)に比し侵襲の少ない治療法であり,患者のQOL(quality of life)の立場からも,食道静脈瘤に対する治療として有効な方法の1つと考えられる。しかし,主に途絶しうる血流は食道壁内であり,EVLの適応決定,経過観察には慎重を要すると考えられた。