消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
硬化療法の補助療法としての胃静脈瘤結紮術併用との試み
石垣 徳江國分 茂博村上 匡人高田 雅博中井 久雄杉本 政直柴田 久雄西元寺 克禮
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1993 年 43 巻 p. 87-91

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抄録

 内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)は,食道静脈瘤に対する新しい治療法として,簡便さ,安全性の点からも注目されている。しかし,胃静脈瘤に対しての評価はほとんど行われていない。今回われわれは,胃静脈瘤に対し硬化療法(EIS)の補助療法として,Stiegmannの方法に基づき,ラテックス製のOリングを用いたEVLを試みたので報告する。対象は男性2例,女性3例の計5例である。適応は緊急2例,待期1例,予防2例。症例1は緊急例であり,胃静脈瘤破裂に対するEIS施行後も同部より再出血しEVLを施行,その後EISを併用し,出血部位は完全に治癒した。症例2は待期例で,EIS施行後,胃静脈瘤の発赤,膨隆が強く,出血の危険性が高いためEVLを施行,その後EIS併用により経過は良好である。症例3の緊急例は出血時全身状態が悪く,EVLを施行,その後EISを施行した。症例4,5の予防例は,EISにて形態の縮小効果に乏しかったが,EVL併用にて静脈瘤の平低化を認めた。全症例で再出血を認めなかった。われわれはEVLの適応を,①合併症の多い高齢者,②硬化剤にアレルギーの既往のある例,③緊急例,④硬化剤による潰瘍形成後にも出血を認めた例,⑤硬化剤注入により供血路は描出されたが静脈瘤の平低化に乏しい例と考えている。EVL単独では,EVL後のEVISで胃静脈瘤への血流が造影されることより,静脈の荒廃効果に乏しいが,EISの併用により治療効果が得られると考えられた。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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