14歳男性のびまん浸潤型S状結腸癌の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する。頸部リンパ節の腫脹と血便を主訴に来院した。リンパ節生検により印環細胞癌と判明し,精査の結果S状結腸癌と診断された。手術を施行したが,主病変のみの切除にとどまった。1992年までに15歳以下の大腸癌は,本症を含め本邦で56例が報告されている。小児には非常にまれな疾患であるため,精査を怠りがちで,早期診断ができない場合が多く,予後もよくない。近年大腸癌の増加傾向にある中で,小児といえども本疾患を念頭においた精査が必要と思えた。本症例の予後は3ヵ月であった。