1994 年 44 巻 p. 64-67
胸部食道癌の根治術後に残置頸部食道に発生した食道表在癌4例を経験した。全例内視鏡検査にて発見され,内視鏡的肉眼型は0-Ⅱc3例,0-Ⅱb1例であり,治療は手術が2例,放射線治療,レーザー治療が各々1例であった。当院にて1985年1月から1993年6月までに切除された術前未治療の食道癌切除417例中85例(20.4%)が同時性多発癌であり,多発食道癌の頻度は極めて高いものである。従って,ヨード染色を併用した内視鏡検査による治療前の食道全長に対する十分な検索は言うに及ばず,根治術後においても異時性に発生する食道癌を念頭においた残食道に対する定期的な経過観察が重要である。