抄録
内視鏡的粘膜切除を施行し,5年以上経過観察できた24症例27病変で,治療の有用性について局所予後,および外科手術例と対比した生命予後につき検討した。切除検体は,すべて一括切除で得られた高分化型管状腺癌で,粘膜癌が25病変,粘膜下層癌2病変であった。完全切除は18病変(68%)で,5年後他病死した3病変を除く15病変には再発は認められなかった。不完全切除は9病変(32%)であった。このうち2病変(25%)には5年後,再発は認められなかったが,6病変(75%)に再発が認められた。しかし,水平方向の残存癌に対しては,EMRやlaserの追加治療を行うと,局所再発のコントロールは可能であった。生命予後は5年生存率として検討した。外科切除例は2cm以下の高分化型腺癌234例の粘膜癌を対象とした。EMR症例の5年生存率は87.5%,外科切除例は88.6%であり,両者に有意差はなかった。以上よりEMRは,局所予後や生命予後の観点からも有用な治療法であることが確認された。