消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
食道炎の重症度と胃液内総胆汁酸濃度・pH
岩切 勝彦中川 義也琴寄 誠山田 久木杉浦 敏昭二神 生爾末岡 伸夫川上 明彦瀬底 正彦香川 隆男平川 恒久小林 正文
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1995 年 47 巻 p. 48-51

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抄録

 胃液内総胆汁酸濃度・pHと逆流性食道炎の重症度,また胃液内総胆汁酸濃度と胃液pHの関係について検討を行った。30人の逆流性食道炎患者は重症度により,軽症(色調変化型食道炎 ; 9例),中等症(融合のないびらん潰瘍型食道炎 ; 12例),重症(融合するびらん潰瘍型食道炎 ; 9例)の3群に分類した。胃液は早朝空腹時に極力反射を防止し,胃管を胃内に挿入した。右側臥位にして1時間安静後,胃液を採取し遠心分離により粘液除去後,総胆汁酸濃度は酵素法により,pHはpHメーターにより測定した。胃液内総胆汁酸濃度は重症群の融合するびらん潰瘍型食道炎(1966±778µM,M±SE)が,軽症群(45±17µM),中等症群(43±15µM)の食道炎に比し,有意に高値であった。胃液内pHは各群に差は認めなかった。逆流性食道炎30例中7例は,酸との共存により食道粘膜障害を惹起しうる200µM以上の胆汁酸が存在した。200µM以上の胆汁酸を認めた7例中5例の胃液pHは4.0未満の酸性域を示した。以上より,高濃度胆汁酸の存在は融合を伴うびらん潰瘍型食道炎を惹起する可能性が考えられた。また胃液内pHが酸性域であっても,胆汁酸の存在は否定できなかった。

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© 1995 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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