1995 年 47 巻 p. 52-55
国立がんセンター中央病院で1991年1月から1995年2月までの食道内視鏡的粘膜切除(EMR)を施行した40症例46病変について検討した。症例の年齢は46歳から81歳まで平均63.8歳であり,男女比は35 : 5であった。部位はImが32病変と多く,次はEiの9病変であった。組織型は全例扁平上皮癌であり,主肉眼型は0-Ⅱcが最も多く34病変(74%),0-Ⅱaが6病変(13%),0-Ⅱbが6病変(13%)で,切除方式は分割切除が31病変(67%)であり残りは一括切除であった。深達度はep,mm1が20例,㎜2が13例,mm3が5例,smが2例であった。EMRは食道粘膜癌に対する根治療法として有用であると考えられ,合併症としての狭窄はブジーを使用することにより解消可能であるため,全周性切除となる病巣に対しても積極的に行うべきである。また,完全切除と病理組織学的に判定された症例でも再発することがあるため,治療後すべての症例で十分な経過観察が必要である。今後は十分な症例を重ねた後,適応条件の拡大も検討必要があると思われた。