消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
肝細胞癌の腹腔鏡的治療
川本 智章井戸 健一中澤 義明礒田 憲夫穂積 正則鈴木 孝典長嶺 伸彦井岡 達也花塚 和伸関根 豊木村 健
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1995 年 47 巻 p. 86-89

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抄録

 われわれは,超音波腹腔鏡(LUS)を用いて腹腔鏡下エタノール注入療法(LEIT)および腹腔鏡下マイクロ波凝固療法(LMCT)を行い,良好な成績を得ている。どちらの方法も局所麻酔下で行うことに特徴がある。LEITでは,腫瘍径が2cm以下の単発例が最もよい適応である。多発例の場合には2cm以下で,腫瘍数が3個以下を適応としている。一方,LMCTでは4cm以下の大きさの腫瘍を適応としている。LEITでは,穿刺針を何本か刺入することにより,比較的大量のエタノールを安全に注入できるため,1回の操作で腫瘍の広い範囲を治療することができる。また,LMCTも侵襲が少なく,凝固による十分な壊死効果が得られる。いずれの方法もLUSを用いるため,他の画像診断では捉えることのできない小肝細胞癌に対して,特に有用な治療法であると考えられる。肝細胞癌の治療には,従来は主として外科的切除,TAE,PEITなどの方法しかなかった。しかし現在では,これに腹腔鏡下の治療が加わり,選択の幅が広がった。肝細胞癌の腹腔鏡的治療は,安全性はもちろん,入院期間の短縮,早期の経口摂取あるいは歩行開始が可能であり,癌結節の完全壊死も得られるため,cost benefitあるいはQOLは十分高いものが得られ,今後ますます発展が期待される。

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© 1995 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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