消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
膵癌例における上部消化管内視鏡所見の検討
中島 俊之西谷 篤史柿沼 徹小坂 健一岩堀 泰基大久根 浩藤盛 健二吉岡 久大西 久仁彦藤原 研司中島 美智子宮本 築生
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 47 巻 p. 90-93

詳細
抄録

 進行膵癌84例および肝硬変376例を対象に,門脈圧亢進症にしばしば認められる食道・胃静脈瘤および胃粘膜病変の観察を,上部消化管内視鏡検査にて行った。膵癌例における静脈瘤の出現は20%に認められ,膵体部に多くみられた。また形態は,F1が76%を占め,F3はみられなかった。膵癌例における胃粘膜病変の出現は7%に認められた。肝硬変例における静脈瘤と胃粘膜病変の出現率では,静脈瘤は70%に,胃粘膜病変は35%に認められた。静脈瘤の形態はF1が38%であった。静脈瘤例における胃粘膜病変の出現率を膵癌例と肝硬変例で比較すると,膵癌例では24%に,肝硬変例では49%に認められ,膵癌例では肝硬変例に比して有意に低率(P<0.05)であった。この違いは,膵癌例では静脈瘤の形態が軽度のものが多かったこと,肝外性の門脈系変化ではcavernous transformationなどのcollateral circulationが生じやすいため,胃粘膜血行動態に及ぼす影響が少ないことによると考えられた。

Fullsize Image
著者関連情報
© 1995 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
前の記事 次の記事
feedback
Top