1995 年 47 巻 p. 98-101
食道の深達度mの0-Ⅱa型病変の多くは白色ないし褪色調を呈しており,赤色調の病変はsm癌を疑うのが常識となっているが,今回われわれは赤色調のepの0-Ⅱa型病変を経験したので報告する。症例は60歳男性。特に自覚症状はなく,定期検診目的に当クリニックで上部消化管内視鏡検査を受けたが,上切歯列より約30cmの左壁に発赤調の丈の低い隆起性病変が発見され,生検にて扁平上皮癌の診断が得られた。発赤調ではあるが,表面は顆粒集簇様で弧の変形が認められないことから,深くてもm2までと診断し,東京医科歯科大学第1外科にてEMRを施行した。病理検査の結果は15×15mmの0-Ⅱa型で,深達度はep,組織型はsquamous cell carcinoma(SCC),ly(-),v(-)であった。