われわれは,Barrett食道に発生した比較的珍しい表層拡大型食道粘膜腺癌を経験したので報告する。症例は64歳,男性。胸痛を主訴に平成7年8月近医を受診し,精査の結果Barrett食道腺癌と診断され,当科に紹介された。内視鏡所見では切歯列より27cmの部位から胃噴門部までルゴール染色不染のBarrett上皮が連続し,約35cmの部位には0-Ⅲ様病変2個と粘膜粗糙な局面を認めた。上部消化管造影検査ではⅠm領域に10×3mmの潰瘍を伴う狭窄病変とひだ集中を伴う7×2mmの潰瘍性病変,および食道裂孔ヘルニアを認めた。Barrett食道腺癌の診断で右開胸開腹,食道亜全摘D2郭清を行った。切除標本の肉眼型分類は0-Ⅱb+Ⅲ,全周性で大きさ9×5cm,病理組織学的検査ではBarrett食道腺癌,m,n(-),ly0,v0であった。