1996 年 49 巻 p. 108-111
症例は70歳男性。1994年に食道潰瘍に対する保存的治療歴あり。1995年3月心窩部不快感を主訴に内視鏡検査を受け,食道腺癌と診断され,当院受診となった。約13cm長の全周型円柱上皮を有するBarrett食道で,腺癌を合併していた。同年8月4日,内視鏡的に腺癌部分を含むBarrett上皮の粘膜切除術を行った。切除標本の組織像は特殊円柱上皮型Barrett上皮で,特有の粘膜筋板の二重化を認めた。標本中央に4.5×2mm大の微小上皮内腺癌(tub1)を認めた。制酸治療を継続したところ,粘膜欠損部に扁平上皮の再生を認めた。Barrett腺癌粘膜切除治療後の扁平上皮再生として,最初の症例報告と思われる。Barrett上皮の起源および合併腺癌の予防・治療上に示唆を与える興味ある症例として報告した。