1996 年 49 巻 p. 130-132
症例は54歳女性。既往歴に胆囊内結石および胆囊腺筋症あり。平成7年8月人間ドックの腹部超音波検査で進行胆囊癌を指摘され,当科に紹介入院となった。腹部CT検査で肝床部,膵頭部および十二指腸への直接浸潤を認めた。ERCPでは,①胆囊体部から底部の内腔の狭小化,②胆囊管のVater乳頭近傍での低位付着,③総肝管とは独立した肝右葉後区域からVater乳頭まで続く副肝管をもつ重複胆管,④主膵管が副肝管で合流する膵管型の膵胆管合流異常,以上4点の異常所見を認めた。進行胆囊癌の診断のもと,当院外科において肝三区域切除兼尾状葉切除,膵頭十二指腸切除が行われた。重複胆管は非常にまれな疾患であり,本邦において胆道系悪性腫瘍を合併した報告はない。本例は重複胆管に胆囊癌が発症した興味深い症例と考え報告した。