消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
内視鏡的乳頭括約筋切開術が診断に有用であった傍乳頭総胆管十二指腸瘻合併Vater乳頭部癌の1例
中溝 裕雅浜田 慶城芹澤 宏渡辺 憲明熊谷 直樹土本 寛二山田 好則三浦 総一郎日比 紀文石井 裕正
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1996 年 49 巻 p. 126-129

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抄録

 症例は77歳,女性。既往に胆石があり,近医に通院していた。平成7年12月11日より発熱,黄疸を認め,血液検査にて胆道系優位の肝機能障害がみられ,12月16日当院に紹介入院となった。腹部エコー,腹部CT検査より胆石を伴う急性胆囊炎が疑われ,抗生剤投与にて10日後には解熱,血液検査も改善したが,総胆管,肝内胆管の拡張が持続し,腫瘍マーカーも高値であったため,内視鏡的逆行性膵胆管造影を施行した。Vater乳頭膨大部の腫大,傍乳頭総胆管十二指腸瘻の形成が確認され,瘻孔部からの造影で総胆管の拡張,陰影欠損がみられ,腫瘍性病変が疑われた。内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)を施行し,腫瘍を露出させ,同部の生検より中等度分化型腺癌と診断した。傍乳頭総胆管十二指腸瘻を合併するVater乳頭部癌はまれであり,ESTを利用した組織生検の有用性を示した貴重な症例と考えられた。

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© 1996 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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