消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
消化性潰瘍におけるHelicobacter pyloriと胃粘膜内微量元素,逆流胆汁酸との関連
豊島 明伊藤 正秀角田 誠之馬越 正通桜井 四郎湯川 雅枝
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1996 年 49 巻 p. 86-89

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抄録

 胃内への逆流胆汁酸と胃粘膜障害の関連について,様々の研究が行われてきた。われわれは逆流胆汁酸を分画に分け,それぞれの胆汁酸濃度とその背景胃粘膜との関連を病理組織学的に観察し検討を行ってきた。今回は胃内への逆流胆汁酸濃度が胃内pHに影響を与えるとの考えより,逆流胆汁酸分画とHelicobacter pylori,さらに胃粘膜内微量元素濃度に関して検討した。53例の消化性潰瘍の患者と8例の慢性胃炎の患者を対象として,逆流胆汁酸分画を高速液体クロマトグラフィー法により,微量元素(Cu,Fe,Zn)をPIXE法により各々測定した。胃内逆流胆汁酸中ケノデオキシコール酸(TCDC)濃度の多い群にHpの生息の少ない結果を得た。よってTCDCがHpの胃内での至適環境に影響を与えている可能性があると考えられた。微量元素Zn濃度はHp生息例において低かった。これはZnのもつHpウレアーゼ活性阻害作用,増殖抑制作用,活性酸素消去作用などでZnが消費されたためと考えられた。またFe濃度も低い傾向が認められ,胃粘膜萎縮との関与が考えられた。次にTCDCと微量元素の関係は,TCDC高濃度群の方にZnの濃度が高いことがわかった。理由の1つにTCDC濃度が高くなるに従って,胃内pHが変化し,Hp菌数の減少が生じ,粘膜内の活性酸素の生産量が減り,Znの消費量が減ったためと考えられた。

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© 1996 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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