消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
三重癌(胃・腎・直腸)に多数の良性腫瘍を伴った1例
豊泉 高峰村井 隆三塩谷 尚志池内 健二石川 正昭山崎 洋次青木 照明
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キーワード: 多重癌, 良性腫瘍
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1998 年 51 巻 p. 104-107

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抄録

 症例は78歳男性で,胃と左腎の同時重複癌および直腸に生じた異時重複癌の三重癌を認めた。胃癌についてはポリペクトミーを施行したが,切除断端陽性のためヒートプローブにて焼灼治療を行った。また腎・直腸癌に対しては,根治的手術を施行した。本症例は腎腺腫,腎血管筋脂肪腫,副腎皮質腺腫,耳下腺多形腺腫,甲状腺腺腫と多数の良性腫瘍を合併しており,また胃・左腎・直腸の組み合わせという点でまれな症例と考えられた。多発癌における経配偶子性遺伝子変異の関与も考慮し,リンパ球および腫瘍組織のp53遺伝子の変異を検索したが異常を認めず,家族歴と併せると遺伝的因子の関与は否定的であった。近年,重複癌は増加傾向にあり,原因として癌好発年齢層の広がり,癌発見率の向上,環境の変化,治療による誘発などが指摘されている。われわれは癌患者の診療に際し,常に多重癌の可能性を考慮する必要があると思われた。

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© 1998 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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