消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
造血幹細胞移植後に発症したCytomegalovirus腸炎の1例
松岡 克善久松 理一岩男 泰矢島 知治金井 隆典緒方 晴彦石井 裕正渡辺 守日比 紀文
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1998 年 51 巻 p. 108-111

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抄録

 症例は33歳,男性。1996年5月急性骨髄性白血病に対し末梢血幹細胞移植を施行し,移植後26日目に大量下血を認めた。緊急大腸内視鏡検査では,全大腸にわたりpunched outの出血性潰瘍が多発していたが,介在する粘膜はほぼ正常であった。生検で上皮の核および細胞質内に封入体構造物を認め,特殊染色にてもCytomegalovirus(CMV)が証明され,CMV腸炎と診断した。Ganciclovir投与によりCMV抗原血症検査は低下したが,真菌性髄膜炎で死亡した。CMV感染症は主にimmunocompromised hostにおいて発症し,予後不良とされるが,最近ではGanciclovirの早期投与の有効性が報告されている。剖検例を含めたCMV感染の報告では,標的臓器として大腸の頻度は高い。Immunocompromised hostが消化器症状を呈する場合,積極的な内視鏡検査は早期診断・治療のために有用と考えられた。

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© 1998 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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