消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
Helicobacter pylori除菌療法後に発症した食道炎の検討
桜井 宏一高橋 寛渥美 節子内山 尚子桐原 和貴半田 宏一樋口 大介小嶋 紀博河野 真弓関 盛人岩村 ゆかり藤田 力也
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 51 巻 p. 59-62

詳細
抄録

 今回われわれは,Hp除菌成功例の消化性潰瘍または瘢痕症例42例における除菌後の食道粘膜の変化について,維持療法群(除菌療法後H2RA投与群)と非維持療法群に分け検討した。42例全例治療前の内視鏡検査にて,ロサンゼルス分類(改)でgrade 0であった。2カ月後の内視鏡検査にて,両群ともgrade 0からgrade Aに悪化した症例が3例,grade Bに悪化した症例が1例の計8例の食道炎を認めた。疾患別では,胃潰瘍,潰瘍瘢痕4例(23.5%),十二指腸潰瘍,潰瘍瘢痕2例(10%),胃・十二指腸潰瘍,潰瘍瘢痕2例(40%)であった。胃潰瘍または胃潰瘍併発している患者で高率なのは,Hpを除菌することで酸分泌能が改善するためである。従って,除菌前の食道粘膜の変化の十分な観察が必要である。少なくとも食道炎の既往または慢性食道炎があれば,H2RAの維持療法が必要であると思われる。十二指腸潰瘍は,除菌前でgrade 0であるが,全例粘膜の白色肥厚を伴う慢性食道炎を呈していたことから,すでに食道炎が悪化する要因を持っていたと考えられる。このような症例に対しては,除菌前後の食道粘膜の変化を注意深く観察するとともに,H2RAによる維持療法が必要であると思われる。以上より除菌に際しては,食道粘膜の詳細な観察により,除菌後に維持療法としてH2RAの投与を行うかどうかの1つの目安となると考えられた。

Fullsize Image
著者関連情報
© 1998 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
前の記事 次の記事
feedback
Top