消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
内視鏡的に止血し得たNSAIDs起因性小腸潰瘍の1例
梁 広五十嵐 正広横山 薫高橋 裕之小林 清典勝又 伴栄西元寺 克禮井原 厚大谷 剛正
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1999 年 54 巻 p. 65-68

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抄録

 症例は43歳,男性。主訴は下血。本例は肩周囲の痛みに対して近医でDiclofenac sodium(以下,DS)1日75mgを約1カ月間継続内服中,突然の下血を認めたため,他疾患との鑑別によりDSによる病変と診断。緊急内視鏡検査にて回腸・結腸吻合部(昭和63年上行結腸癌にて手術)の回腸側に不整型で打ち抜き状の境界明瞭な小潰瘍が多発し,一部より活動性の出血を確認しクリップにて止血した。治療はDSの中止,中心静脈栄養による腸管の安静により約30日で改善を認めた。NSAIDsによる下部消化管病変の診断基準は現在のところなく,組織学的な診断も困難であるが,NSAIDs潰瘍は大量出血が特徴であり,その他の炎症性腸疾患とは,臨床経過や内視鏡所見,組織所見から鑑別可能と考えた。本症例のごとく,NSAIDs潰瘍に対して,内視鏡的クリッピング術にて止血し得た症例は他に報告例を認めず,貴重な症例と思われ報告した。

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© 1999 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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