消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
抗サイトメガロウイルス剤が奏効した十二指腸潰瘍の1例
樋口 佳奈子田代 博一石田 順朗林 篤及能 克宏藤島 敏智市川 欧子大原 信北洞 哲治
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1999 年 55 巻 2 号 p. 44-47

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抄録

 患者は61歳,男性。生来健康であったが,平成10年11月,黄疸を指摘され当院へ紹介入院。黄疸・肝機能障害を認めたが,肝炎ウイルス抗体はすべて陰性,抗HIV抗体も陰性であった。入院時胸焼けを伴うため,上部消化管内視鏡検査を施行し,十二指腸球部から下行脚に多発性の活動性潰瘍を認めた。生検組織培養,13C-尿素呼気試験にて,Helicobacter pyloriH.pylori)は陰性であった。2ヵ月間抗潰瘍剤を投与するも縮小せず,生検組織中の核内封入体は認めなかったが,サイトメガロウイルス(CMV)-IgM高値,肝生検組織のPCRにてCMV-DNAを認めたため,CMV感染に起因する十二指腸潰瘍と診断した。抗CMV剤投与により,自他覚所見の速やかな改善と潰瘍の治癒化を認めた。本症例はH.pylori陰性,抗潰瘍剤に抵抗性の十二指腸潰瘍の場合,その原因としてCMV感染も考慮する必要があることを示唆するものである。

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© 1999 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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