消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
Helicobacter pylori陰性例における背景胃粘膜―萎縮,腸上皮化生を中心に―
松久 威史羽山 享宏芳村 昇治山田 宣孝
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2000 年 57 巻 2 号 p. 34-39

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抄録
 Helicobacter pyloriHp)陰性例の萎縮性胃炎,腸上皮化生を観察し,Hp陽性例のそれらと比較した。年齢,性別をマッチさせて得られたHp陽性例,陰性例を比較すると,陽性例では内視鏡的萎縮が36.5%にみられたのに対し,陰性例では17.6%であった。これは,われわれが予測した頻度よりも高い値であった。Hp陰性例の年齢と内視鏡的胃粘膜スコアの間には,陽性例と同様に正の相関がみられ,陰性例も加齢に伴い段階的に萎縮が進行することが明らかとなった。Hp陰性例の3点生検切片3番(胃体下部小彎側)の腸上皮化生スコアは,陽性例と同様に年齢との間に正の相関を示し,軽度から高度の腸上皮化生が各年齢層に分布していた。Hp陽性例との違いは腸上皮化生の出現し始める時期が陽性例よりも約10年遅い点である。また,何れの生検部位においても,Hp陽性例に比し陰性例で腺萎縮のみられる症例の頻度が有意に低かった。腸上皮化生例の頻度も切片2番(胃体上部大彎側)を除き陽性例で高かった。Hp陽性例では3点生検切片の腺萎縮,腸上皮化生率は近似しているが,陰性例では腺萎縮率よりも腸上皮化生率が高く,腸上皮化生が萎縮に先行する症例のある可能性も否定出来ない。Hp陽性例ではHp持続感染により萎縮が進行することをよく反映し,PGⅠ/Ⅱ比と年齢,PGⅠ/Ⅱ比と背景胃粘膜の間に負の相関を認めたが,陰性例ではこのような傾向はみられなかった。
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© 2000 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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