抄録
山梨県甲斐市の中位段丘上には粘土集積層をもつ褐色森林土が分布し,その土壌断面形態,理化学的および鉱物学的性質,微細形態学的特徴を調べ,分類学的位置づけについて考察したところ,日本土壌分類体系(2017)では石灰施用の影響を考慮すると,粘土集積カルシウム型富塩基土ではなく下層赤黄色褐色森林土に分類する方が適切であると判断した。また,包括的土壌分類第1次試案(2011)では細粒質下層赤黄色褐色森林土,WRB(2022)ではHaplic Luvisol, Clayic, Cutanic, Differenticに分類された。わが国でも土壌侵食や新たな母材の供給の少ない,安定した地形面上に発達した褐色森林土には,粘土の機械的移動(レシベ化作用)により形成された粘土集積層をもつものがあることが明らかになった。