抄録
三重県西部に位置する上野盆地内の水田土壌5断面(M11~M15)について,土壌調査および土壌分類を行った。停滞水の影響がグライ特徴あるいは地下水湿性特徴として検出され,土壌分類名にはその影響の程度の違いが反映された。日本土壌分類体系(2017)では,M11は表層灰色グライ沖積土,M12,M13は普通灰色沖積土,M14,M15は斑鉄型グライ沖積土に分類された。包括的土壌分類第1次試案(2011)では,M11は細粒質表層灰色グライ低地土,M12,M13は細粒質普通灰色低地土,M14,M15は細粒質斑鉄型グライ低地土に分類された。World reference base for soil resources (2022)では,M11はEutric Orthofluvic Gleysol (Pantoclayic),M12はEutric Pantofluvic Fluvisol (Pantoclayic),M13はEutric Gleyic Pantofluvic Fluvisol (Pantoloamic),M14,M15はEutric Orthofluvic Gleysol (Pantoloamic)に分類された。これら上野盆地の水田土壌は,古琵琶湖層群の影響を強く受けていると考えられ,三重県北中部の伊勢平野内の水田土壌と比較して粘土含有量が高かった。しかし,上野盆地と伊勢平野の水田土壌を通して,粘土含量とCECの間には高い相関が認められたことから(r = 0.88, p < 0.01, n = 36),単位重量あたりの粘土が発生する負電荷量は上野盆地と伊勢平野の水田土壌で同等であると考えられた。調査を行った5ペドンは,いずれも還元状態による影響を強く受けており,一部のペドンでは鉄の還元溶脱・集積の傾向が見られた。今後継続的に利用する場合には,鉄の溶脱に関して注意を要すると考えられた。