日本歯周病学会会誌
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原著
精神的ストレスおよび自己効力感が歯周病の進行・再発に与える影響に関する臨床評価
下田平 貴子瀬戸口 尚志町頭 三保和泉 雄一
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2006 年 48 巻 3 号 p. 174-181

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抄録

歯周病の発症や進行には局所の細菌感染と全身の生体防御が関与するが,生体防御機能へのストレスの影響も以前より知られている。また,歯周治療において重要な口腔衛生管理には,自己効力感が影響すると考えられる。今回,ストレス及び自己効力感が歯周病に与える影響を検討した。メインテナンス患者36名 (男性21名,女性15名,平均年齢62.6歳) を対象とし,心理テストのPOMS,唾液クロモグラニンA (CgA) 濃度の測定,特性的自己効力感テストを行った。POMSの結果より対象患者をストレス有群とストレス無群に分類し,初診時,最終評価時,メインテナンス時の歯周ポケットの深さ (PD) ,プロービング時の出血 (BOP) ,O′LearyのPlaque Control Record (PCR) について検討した。ストレス有群は無群に比べ,CgA濃度は有意に高く,自己効力感は有意に低い値を示した。メインテナンス時の平均PDはストレス有群で無群に比べ有意に高かった。CgA濃度と初診時平均PD間,およびCgA濃度と初診時のBOP陽性の部位の割合に有意な相関がみられた。メインテナンス時のPCRでは,自己効力感の高い群は,低い群に比べ有意に低い値を示した。これらの結果より,ストレスがある人は歯周病に罹患しやすく再発しやすいこと,さらに自己効力感が口腔衛生状態に影響を与え,歯周病の再発に影響を及ぼす可能性が示唆された。

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© 2006 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
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