日本歯周病学会会誌
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原著
喫煙者における歯周治療期間中の付着の喪失と臨床的パラメータとの関連について
関野 愉沼部 幸博鈴木 史彦中嶋 大誠宮尾 益佳築舘 勇樹今村 恭也池田 祥恵中山 大輔岡本 浩
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2007 年 49 巻 3 号 p. 215-223

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抄録

本後ろ向き研究の目的は喫煙者における種々の臨床的パラメータと歯周治療期間中の付着の喪失との関連を評価することである。奥羽大学歯学部附属病院にて,動的歯周治療とメインテナンス治療を2年以上受診した喫煙者(喫煙群 : 男性11名,女性1名,平均年齢54.5±12.4歳)と非喫煙者(非喫煙群 : 男性9名,女性3名,平均年齢54.4±9.8歳)からそれぞれ12名のデータを抽出し分析を行った。ベースライン(BL)診査時に,すべての被験者の喪失歯(MT)数,プロービングポケットデプス,(PPD),臨床的アタッチメントレベル(CAL),プロービン時の出血(BOP),プラークスコア(PCR)を記録した。診査の後,全ての被験者に対し,口腔衛生指導および原因除去治療を行い,それらの治療終了後,1~3カ月の間隔で,リコールプログラムに組み入れた。BL診査から平均約2年後に同様の臨床的パラメータについて再評価を行った。各群の観察期間中の臨床パラメータと2年間で2mm以上付着の喪失が起こった部位の頻度(%)との相関をSpearmanの順位相関により解析した。喫煙群においては,全ての臨床的パラメータは弱い相関しか認められなかった。他方,非喫煙群においては,全歯面の分析では,再評価時のMT数およびCAL≧5mmの頻度(%)が,BL時PPD≧4mmの部位の分析では再評価時のPPD≧6mmの頻度(%)およびBL時と再評価時のCAL≧5mmの頻度(%)が付着喪失部位の頻度と有意に相関した。したがって,喫煙患者では,歯周治療の予後予測が困難になるので,より厳密な診査が必要であると考えられた。

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© 2007 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
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