日本歯周病学会会誌
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症例報告
歯周基本治療により咬合状態が改善し脳活性を認めた症例
-Functional MRIによる解析を用いて-
村岡 宏祐田中 達朗久保田 浩三森本 泰宏横田 誠
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キーワード: 歯周基本治療, 咬合, fMRI
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2008 年 50 巻 2 号 p. 121-128

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抄録

本症例は, 慢性歯周炎広汎型の患者で, 歯周基本治療により, 咬合機能が改善された際, functional MRI(fMRI)のBOLD(blood oxygeneration level dependent)信号で咬合状態の改善を示す信号変化が確認されたので報告する。患者は60歳女性で, 全顎的な歯周治療を希望して来院した。既往歴は, 高脂血症である。臨床診査およびX線診査によって, 慢性歯周炎広汎型と診断した。歯周基本治療は, Tooth Brushing Instruction, Scaling, Root planingのみとし, 咬合調整は一切行わなかった。患者の同意を得て, 初診時と再評価時に, 咬合力の診査とfMRIを撮影した。初診時のfMRIでは, 噛み締め時に, 弱いBOLD信号を片側大脳皮質一次体性感覚野のみに認めた。歯周基本治療を行うと, 歯周組織, 咬合力の改善を認めた。同時に, fMRIによる脳血流を示すBOLD信号は, 左右対称性を示すと同時に増加傾向を認めた。
この結果は, 慢性歯周炎広汎型の患者に対する歯周基本治療により片側のみの弱い咬合から両側性の強い咬合状態に変化したことをfMRIによりとらえた可能性を示唆する。
日本歯周病学会会誌(日誌周誌)50(2) : 121-128, 2008

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© 2008 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
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