80歳地域住民において糖尿病と歯周病が生命予後に影響するのか検討した。平成10年福岡県北九州市とその近郊に在住する80歳697名が歯科・内科検診を受診した。697名の12年後の生存調査から,全死亡および肺炎,循環器疾患,悪性腫瘍による死亡に分けて解析を行った。4 mm以上の歯周ポケットのある歯数が0~4本を軽症歯周病群(526名,無歯顎者を含む),5本以上を重症歯周病群(169名)とした。糖尿病群は血糖値200 mg/dl以上または糖尿病の既往歴や血糖降下剤を服用している77名とした。重症歯周病群は軽症歯周病群より肺炎死リスクが12年間で2.28倍有意に高かったが,全死亡,循環器死,悪性腫瘍死には影響しなかった。糖尿病群は12年間で非糖尿病群より全死亡,肺炎死のリスクが高かった。非糖尿病+軽症歯周病群,非糖尿病+重症歯周病群,糖尿病+軽症歯周病群,糖尿病+重症歯周病群の4群では,非糖尿病+軽症歯周病群に比べ肺炎死リスクが,非糖尿病+重症歯周病群で2.90倍,糖尿病+軽症歯周病群で5.93倍,糖尿病+重症歯周病群で6.20倍と上昇した。全死亡リスクは糖尿病+軽症歯周病群で2.24倍,糖尿病+重症歯周病群で2.21倍と有意に上昇した。80歳地域高齢者では重症歯周病があると肺炎死リスクが増大するが,糖尿病を合併するとさらに肺炎死リスクが上昇する可能性が示唆された。